研究課題/領域番号 |
63870067
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
産婦人科学
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
小林 俊文 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (30051460)
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研究分担者 |
青木 類 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70175743)
森定 優 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40051552)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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キーワード | 凍結保存 / 受精卵 / 卵子 / 体外受精 / 凍結保護剤 / in vitro fertilization |
研究概要 |
昨年度に我が国初の凍結受精卵による妊娠・出産を報告して以来、研究の主眼を受精卵の簡易凍結法と卵子の凍結保存に移行した。その結果、以下の知見を得た。 プログラムフリ-ザ-を使用した従来からの凍結保存法と比較して、断熱剤で保護された小型容器中の雰囲気で自然に冷却する簡易凍結法は1回当たりの液体窒素消費量が約15分の1であり、また凍結用ストロ-を水平にした状態で植氷操作を行うため細胞に対する温度ストレスをより小さくできることが判明した。さらにプログラムフリ-ザ-では植氷操作後の温度平衡を必要としたが、簡易凍結法では平衡時間を廃しても融解後の蘇生率は統計学的に有意の差を認めなかった。したがって、凍結保存には簡易凍結法でも充分に満足のいく成果が得られることが分かった。卵子の凍結保存では、卵丘細胞を除去せずに凍結保存したほうが融解後の生存率が高いことがわかり、卵丘細胞と卵子との間の内分泌学的相互作用が融解後の生存を決定する重要な要素であることが推測された。次に、凍結保護剤に関して検討を加かた結果、ジメチルスルフォキシドよりもプロパンジオ-ルのほうが良好な成績を示し、後者の持つ膜透過性の高さが反映された。また、これら細胞膜透過性凍結保護物質だけでなく、細胞外浸透圧亢進作用を有する蔗糖を添加すると、初期胚の場合と同様に融解後の蘇生率が先らに向上し、凍結過程における細胞内自由水の脱水が重要な要素であることが示唆された。さらに融解直後のマウス胚の電子顕微鏡写真より、ミトコンドリア等の細胞内小器官の超微形態が変形していることが判明し、微小な低温障害が発生していること可能性が明らかになった。凍結前の卵子の成熟度も融解後の生存性と密接に関係し、ヒト臨床応用にあたっては更なる凍結法の改良と綿密な成熟判定が不可欠であることが明らかになった。
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