研究概要 |
歯周病、特に成人性歯周炎の発病にはBacteroides gingivalisが深くかかわっている。本研究は同菌に特異的な抗原性物質として菌体表層から外界へ突出している線毛のタンパク質に注目し、同タンパクに対する抗体をまず調製し、ついでIgG画分をラテックス粒子に吸着(感作)させ、感作ラテックスの凝集活性の有無によりB、gingivalisの存否を知ることを目的とした。 1)ウサギの抗線毛抗血清よりえたIgGは、B、gingivalisの被験株14株のすべてと反応するのに対し、他のBacteroides種の菌株とは反応せず、菌種特異的であることが示された。これに対してマウスの抗線毛モノクロ-ン抗体はB,gingivalisの中でも反応しない菌株が認められた。 2)ウサギ抗体感作ラテックス粒子はB、gingivalisのリポ多糖(LPS)や莢膜多糖抗原とは反応しないが、線毛タンパク(>4ng)の存在下で強い凝集反応を生じた。同反応はpH7.0〜8.5の間で最も安定、かつ高感度であった。反応に要する時間は5分以内(室温)であった。 3)B、gingivalis菌体をカオトロピックなグアニジン塩酸塩や尿素、非イオン界面活性剤であるTriton X-100,n-オクチル-β-D-グルコシドn-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、CHAPS,CHAPSOによる溶菌を伴うタンパク質の抽出操作を加えることにより、凝集の感度や特異性が共に著しく上昇した。 4)血中抗線毛抗体価の高い成人歯周炎の病巣部より得たプラ-クを上昇の方法で感作ラテックス凝集反応を行うと明確な陽性反応を示した。しかし、同抗体価の上昇が認められない被験者のプラ-クは反応陰性であり、凝集反応の有無によりB.gingivalisの感染の有無を知ることができることが示唆された。今後の実用化のためにはさらに感度の向上と、特異性の維持をはかりつつ一層の工夫を試みたい。
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