研究概要 |
歯周病の発症にはBacteroides gingivalisが重要な病原因子として深くかかわっている。本研究は、同菌の菌体表層に位置する線毛タンパク抗原に着目し、同抗原を指標としてラテックス凝集法を用いて、歯周病原菌たるB,gingivalisを迅速かつ特異的に検出する方法の開発を試みた。 1.381株の培養菌体より機械的剥離により線毛を遊離させ、クロマトグラフィ-により純化した。精製線毛抗体に対するウサギ抗体、およびマウス単クロ-ン抗体を調製した。ウサギ抗線毛IgGはB,gingivalisの被験菌株14株のすべと反応したが、他のBacteroides種とは反応しなかった。これに対してマウスの抗線毛単クロ-ン抗体はB,gingivalis株の中でも反応性を欠如するものがあった。 2.ウサギ抗線毛IgG感作ラテックス粒子は線毛タンパク(>4ng)の存在下で強い凝集反応を生じた。同反応はph7.0〜8.5の間で安定であり、反応に要する時間は室温で5分以内であった。 3.B,gingivalis菌体を尿素、グアニジン塩酸塩や各種界面活性剤を用いてタンパク質の抽出操作を行うと、凝集感度も特異性も著しく上昇することが明らかになった。 4.成人性歯周疾患者の病巣部プラ-ク検体を上述の方法で感作ラテックス凝集反応を行うと明確な陽性反応を示した。しかし、健康部プラ-ク検体では反応は陰性であった。 これらの実験結果から、抗線毛IgG感作ラテックスの凝集反応の有無により、B,gingivalisの感染の存在を推測できることが示された。
|