研究概要 |
歯科用金属が具備すべき諸要件の内,特に重要と思われる生物学的要件と,耐蝕性に代表される化学的要件に対する試験法としては,最終的な臨床試験の前に,種々の基礎的試験が行われている.研究代表者らは,昭和60年頃より浸漬試験,動物体内埋入試験を行った金属,および口腔内より撤去した歯冠修復物の表面性状や成分組成の変化を,EPMAにより観察,測定してきた.その結果,基礎的試験や,長期の口腔内使用を経た歯科用金属の微細な変化の概要が明らかになりつつある.さらに一歩進めて,規格化した各種材料による歯冠修復物を口腔内に装着し,その変化を経時的に追究することによる臨床試験を行いたいと考えてきた.それには,1)測定試料が多くなるので,出来る限り能率よく短時間で分析可能であり,2)試料の観察,測定は,同一微小部分に対して経時的に繰り返し行い,試験前およびその後の変化を比較するので,測定部位を正確に再現しなければならない.この点,従来のEPMAによる定量分析は,能率が悪く,かつ正確さを欠く憾みがあった.本研究は,EPMAのこの点を改善し,観察,測定の能率と精度の向上をはかるため,試料の多数の分析面の位置を座標記憶装置により順次コンピュ-タに入力し,これを予めプログラムしたソフトウェアによりEPMAのステ-ジ駆動ユニットと連動させ,任意の分析面について自動定量分析するシステムの開発に成功した.そして更に光エンコ-ダ,直流モ-タ及びギヤ駆動のバックラッシュをのぞくソフトの開発により一層の精度向上に成功した.本年度は,その分析面の再現精度を検討した後,実際に使用することにより分析能率の向上について検討を加えた.その結果,多数回の記憶座標の呼び出しには,5000倍以上の強拡大においても非常に優秀な試料面の位置再現精度を有し,分析能率も従来より格段に向上した.その成果は,第55回口腔病学会総会において発表した.
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