1)脳腸ホルモンおよびそれらの前駆体について、各種動物由来のホルモンまたは前駆体の提出一次構造に基づき、親水領域および二次構造を解析し、さらに各種動物由来のホルモンにおけるアミノ酸残基の置換領域を考察し、特に置換部位を含む親水領域および共通の配列からなる領域を選び、それに相当する約15-20アミノ酸残基のペプチドを、各種哺乳動物由来のホルモンにつき、それぞれ合成した。合成は自動ペプチド合成機により行い、粗生物は0.01N HC1/CH_3CN系の濃度勾配による逆相HPLCにより精製し、確実に純度を証明した。その結果ガラニン、GLP(グルカゴン様ペプチド)、バロシン、モルモットVIP、NPY、ヘロデルミン、パンクレオスタチン、ヒトオキシントモデュリン、LH-RH前駆体の化学合成を達成した。 2)上記合成ペプチドを免疫抗原とし家兎に抗血清を作製するとともに単クロ-ン抗体の作製を行った。その結果ガラニンの単クロ-ン抗体を作製し、P物質、ニュ-ロキニンA、Bなど、構造類似の脳腸ホルモンを明確に免疫組織化学的に区別し、その産生ニュ-ロンを同定した。GLP-1についてはGLP-1(7-22)、GLP-1(1-35)をそれぞれ抗原として用い特異抗体を作製することにより、前駆体のプロセシングが脳と膵で異なることを証明し、本研究で作製した2種のGLP-1特異抗体の有用性を明らかにした。VIPについては、モルモットVIP特異抗体を作製し、実験動物におけるVIPの研究を可能にした。バロシン特異抗体の作製により、バロシンの生体内存在意義を明らかにすることができた。NPY N単フラグメントの抗原として用い、類似ペプチドと交差反応しない特異抗体を初めて作製した。LH-RH前駆体に含まれるGAP特異抗体の作製によりLH-RH前駆体産生ニュ-ロンを確実に証明することに成功し、本法の応用性を明確にした。
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