新規開発した自然発症てんかんラットの長期維持法とその薬理学的応用法の確立

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63870109
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 笹 征史 京都大学, 医学部, 助教授 (20025654)
• 研究分担者: 芹川 忠夫 京都大学, 医学部, 助手 (30025655) ; 山田 淳三 京都大学, 医学部, 教授 (90025651)
• キーワード: 自然発症てんかんラット / フェノバルビタ-ル / Zitterラット / tremorラット / Kyo:Wistarラット / ド-パミン / ノルアドレナリン / てんかん様発作

研究概要

前年度でほぼ確立した増殖ならびに維持方法により、自然発症てんかんラット(SER;Zi/Zi,tm/tm)の生発をはかり、その方法の妥当性と薬理学的応用法を確立すると共に、この動物における脳内のカテコ-ルアミン動態について検討を加えた。今年度のSERは雌雄それぞれ10匹と対照群としてKyo:Wistar雌雄それぞれ10匹を用い、前年度にえた至適飼育条件下で成育と行動を観察した。SERの平均寿命は雌雄それぞれ15.7±2.2および14.0±2.5週であり、Kyo:Wistar群では20週以内に死亡するものはなかった。体重増加もほぼ同様であった。SERに対する0.1%フェノバルビタ-ル含有飼料を自由摂取させた場合の結果もほぼ同様であったことから、抗てんかん薬の飼料混入摂取法も妥当な方法と考えられた。さらにこのようにして生育させたSERにおいて脳内ド-パミンおよびノルアドレナリン含量につき、その親系統のZitterラット(Zi/Zi),tremorラット(tm/tm)およびKyo:Wistarラットのそれと比較検討した。てんかん様発作を発症する10〜12週のSERおよびZitterラットの尾状核において、ド-パミンがtremorおよびKyo:Wistarラットの尾状核におけるよりも減少していた。しかし、てんかん発作を発症する以前の5週ではこの減少は認められなかった。また、その他の部位ではド-パミン含量に差はみられなかった。一方、ノルアドレナリン含量は10〜12週のSERおよびZitterラットの視床-視床下部、中脳、小脳橋-延髄においてtremorおよびKyo:Wistarラットより増加しており、5週のSERとzitterではこのような増加は認められなかった。またBNラットを用いバッククロスによる遺伝学的検索を行い、ド-パミン増加とノルアドレナリン減少はZi遺伝子に伴うことが見い出された。これらのことからてんかん様発作はド-パミンの増加とノルアドレナリンの増加が関与するのではないかと考えられた。

研究成果

• [文献書誌] T.Serikawa,K.Kigoshi,Y.Yamada,Y.Ohno,H.Ujihara,Y.Fujita,M.Sasa,S.takaori: "Long-term effects of continual intake of phenobarbital on the spontaneously epileptic,double mutant rat" Epilepsia. 31. 9-14 (1990)
• [文献書誌] M.Hara,M.sasa,A.Kawabata,T.Serikawa,T.Yamada and S.Takaori: "Decreased dopamine and increased noradrenaline levels in the spontaneously epileptic rat,adouble mutant" Epilepsia.
• [文献書誌] T.Serikawa,J.Yamada,H.Ujihara,Y.Ohno,M.Sasa and S.Takaori: "Development of absence-like seizure and tonic convulsion in spontaneously epileptic rat(SER)" Laboratory Animal.
• [文献書誌] H.Ujihar,Xie R.,M.Sasa,Y.Fujita,M.Yoshimura,T.Serikawa,J.Yamada and S.Takaori: "Antiepleptic effects of thyrotropin-releasing hormone in spontaneously epileptic rat(SER),adouble mutant" Eur.J.Pharmacol.