研究概要 |
自然発症てんかんラット(SER:zi/zi,tm/tm)はkyo:wistarラット由来のtremorラットヘテロ型(tm/t)とSD系ラット由来のzitterラットホモ型(Zi/Zi)を交配してえられる。SERの増殖長期維持法と薬理学的応用法を確立すると共にSERのてんかん様発作発現に関与すると考えられる神経伝達物質の脳内動態につき研究を行った。SERは無菌環境下でZitterホモ、tremorヘテロ因子(zi/zi,tm/+)をもつもの同志を交配し、1/4の割合でえられている。離乳後、非無菌室に移し、生育させる至適条件がえられた。室温23±2゚C,室温55±5%、自由水摂取、隔離飼育、防音に近いことなどの条件下で、平均寿命はSER雌雄においてそれぞれ、15.7および16.5週であり、対照としたkyo:wistarラットでは20週以内に死亡するものはなかった。0.1%フェノバルビタ-ル混入飼育を自由に摂取させた場合、血中フェノバルビタ-ル濃度はほぼヒトでの有効濃度相当量がえられ、けいれん発作も抑制され、かつSER雌雄の平均寿命は延長した(雌19.1週、雄19.1週)。しかし、脳波記録を行って確かめた欠神様発作はフェノバルビタ-ルにより抑制されなかった。SERは短命であるがほぼ16週まで維持でき、発作の発現する10〜16週の間に研究に使用でき、抗てんかん薬の長期効果を検討する上で有用なモデルとなることが確かめられた。さらに、てんかん様発作と脳内カテコルアミン動態とを検討し、発作の発症する10〜12週令のSERとZitterラットではtremorラットとkyo:wistarラットよりも尾状核においてド-パミンが減少し、視床、視床下部、中脳、小脳、橋延髄においてノルアドレナリンが増加していた。しかし、発作発症前の5週令SERおよびzitterラットではこのような変化は認められなかった。また、このようなカテコラミンの変化はzi遺伝子に伴うものであった。これらから、SERのてんかん様発作はカテコラミンの動態に関連していると考えられた。
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