研究概要 |
本年度は本研究の最終年度にあたるため、2年間にわたる基礎的および臨床的研究を基に、歯周病における白血球,特に好中球の役割に関して更に詳細な検討を行った。すなわち,これまでの研究で,1)ラットの上顎右側第1臼歯と第2臼歯間部(実験側)にナイロン系を3週間挿入することにより歯周組織に軽度の炎症性病変を惹起させることが可能であること,2)それらの動物に全身的に抗腫瘍剤の一種であるメソトレキセ-トを投与することにより好中球の減少状態を引き起こし得ることと、3)それらの動物を7週間にわたり観察すると、歯槽骨の高度な吸収を伴う著しい歯周組織破壊が生じることが明らかになった。そこで今回は、このような好中球の減少状態をある種の薬剤を投与することにより回復させた場合、歯周組織破壊が抑制されるか否かを確認することにした。薬剤としては、サイトカインの一種で好中球の機能を高めることが確認されているGーCSF(GranulocytoーColony Stimulating Factor)を用いた。GーCSFは、好中球減少症や腫瘍患者の治療に一部応用されていることが報告されている。今回の実験ではラットにGーCSFを投与して、メソトレキセ-ト投与ラットにおいても好中球の数の上昇が認められるか否かを確認した。その結果、GーCSF投与3日および5日後に好中球の数の上昇が認められた。しかし、組織学的所見では歯周組織破壊の抑制は観察されなかった。このことは、歯周病の進行における局所的因子である炎症と全身的因子の1つである好中球機能との関係がきわめて複雑であることを示唆しているものであり、今後さらに詳細に両者の関係を追求して行くことの必要性が示唆された。
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