研究領域 | 古代アメリカの比較文明論 |
研究課題/領域番号 |
15H00712
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大森 貴之 東京大学, 総合研究博物館, 研究員 (30748900)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 樹木年輪 / 同位体分析 / 古環境復元 / ナスカ / ワランゴ |
研究実績の概要 |
本研究では、南米乾燥地帯で広範囲に古くから自生するワランゴ樹木年輪の同位体分析を用いた気候復元モデルの構築とナスカ台地における古環境情報の抽出を目的としている。ワランゴ年輪中の同位体比変動を古環境指標として応用するためには、まず、乾燥地帯での生態学的特徴が十分に明らかでないワランゴの年輪構造や成長パターンを検証する必要があった。細胞レベルでの年輪構造解析により年輪年代学的なアプローチの可能性を見出すことができれば現生・古材共に樹木年輪の年代決定精度を放射性炭素年代測定と合わせて飛躍的に向上でき、確度の高い年代軸で同位体比変動の議論が可能となる。 平成27年度は、現生ワランゴ樹木年輪を中心に、デジタルマイクロスコープや電子顕微鏡による年輪構造解析、年輪年代測定に向けた年輪計測、放射性炭素年代測定を用いた暦年代決定を進めた。年輪計測と放射性炭素年代測定の結果を統計により評価し、ワランゴ年輪形成のパターンについて考察を行った。年代既知の樹木年輪は、炭素・酸素同位体比分析を進め、生育環境の気象データを用いて環境との応答について評価を行った。これら樹木年輪の分析に加え、ワランゴ生育環境を把握するためナスカ台地周辺地域の巡検を行い植生分布調査も行った。また、本研究の遂行には、安定的なデータ生産に向けて、試料調製法の効率化や安定同位体分析及び放射性炭素年代測定装置の最適化をはかった。 平成28年度は、現生ワランゴ樹木年輪から得られた生態学的特徴をもとにワランゴ古材に応用し、古環境復元を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現生ワランゴ樹木年輪の分析に関しては、予定通りに進展させることができた。しかし、材として取り扱いの難しさや年輪構造の不規則さから、当初予定よりも多くの時間を要した。また、安定同位体比分析及び放射性炭素年代測定装置の改良や最適化を十分にはかったために、平成27年度に予定した分析点数を完結することができなかった。ただし、データ量産化に向けた準備は整っており、平成28年度の早い段階で計画以上の進展が得られることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、主に遺跡出土木材を用い、考古学資料に応用した場合の年輪気候学的な有効性評価を中心に研究を展開する。また、分析を計画する樹木年輪の14C年代測定が終了した時点で、初年度のデータも併せて14C編年の構築を行う。古材から得られる環境情報は、考古学的背景と環境の関連性について議論する。
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