公募研究
これまでかご形シルセスキオキサン(DDSQ)を基盤とした有機ー無機ハイブリッド両親媒性分子の合成を行ってきた。本研究ではハイブリッド両親媒性分子の気液界面を用いた構造化とナノ薄膜化に取り組んだ。はじめにかごの両末端に反応性Si-H基を有する2H-DDSQを用い、これにトルエン中でジエチレングリコールモノビニルエーテルとPt(dvs)触媒を用いたヒドロシリル化反応を行うことで、ジエチレングリコール鎖を導入した。続いて、イソシアン酸エチルを加えることで、エチレングリコール鎖の水酸基を水素結合部位となるカルバメート基に置換した2DEGNH-DDSQを合成した。次に、表面圧―面積等温曲線測定により目的物の水面上単分子膜挙動の検討を行い、ブリュースター角顕微鏡(BAM)によりその膜構造を観察した。その結果、膜崩壊後にロッド状の集合体が観察された。DSC測定においては2DEGNH-DDSQは結晶化ピークを示さず、ガラス転移温度のみを示すアモルファスな分子であった。そのため、気液界面に束縛されたことで2DEGNH-DDSQが2次元的に構造化されたためと考えられる。そこで、7 mN/mで10時間放置し、親水性シリコン基板に水平付着法で1層転写した。原子間力顕微鏡(AFM)の観察により、厚さ1~2 nm、50μm2以上の大面積ハイブリッドナノプレートが作製されていることが明らかとなった。これらを基板に5回転写し二次元X線回折測定を行ったところ、積層構造に伴う明確な散乱がout-of-plane方向に観測されたともに2次元結晶化に伴う回折ピークがin-plane方向にも明瞭に観察された。また薄膜のFT-IR測定を行ったところ、カルバメート基が分子間で高度に配向した水素結合ネットワークを形成していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
無機ー有機ハイブリッド両親媒性分子による自己組織化は当初の狙い通りであり、おおむね順調に進展していると考えられる。
無機ー有機ハイブリッド両親媒性分子を気液界面に展開することで、マイクロメートル四方の2次元ハイブリッド結晶膜を作製することができた。この後は圧縮時間をさらに長くすることでミリメートル四方の2次元ハイブリッド結晶膜の作製を行う。さらに作製した薄膜のX線結晶構造を精密に解析することで、その構造を明確にする。これまでの赤外分光測定の結果より2次元ハイブリッド膜においてはDDSQ部分と有機側鎖部分が交互に配列した層内ラメラ構造を取っていることが示唆されている。そこで、大面積2次元膜を基板に転写し、加熱することで有機部位を分解させるとともシルセスキオキサンのかご構造を崩壊させシリカナノラインを形成させる。このように形成させたシリカラインの幅はDDSQの直径である1nm程度であり、またライン間のスペースは有機鎖間距離である2nm程度である。これはnmサイズのラインアンドスペースを基板上に形成できることを示唆している。このように形成させたラインアンドスペースをレジストとしてもちい、ドライエッチングにより下地の基板に、ナノスケールのラインアンドスペースを転写することを試みる。さらに、これまでの知見を元に親水性有機鎖であるエチレングリコールの長さを変えることで、ライン間のスペースを制御し、これより気液界面を用いて階層化した無機ー有機ハイブリッド両親媒性分子がナノレジストとして有用であることを明らかにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
Polymer Chemistry
巻: 6 ページ: 2695-2706
10.1039/C5PY00018A
Rapid Communications in Photoscience
巻: 4 ページ: 16-18
Langmuir
巻: 31 ページ: 5174-5180
10.1021/acs.langmuir.5b00036
Chem. Lett.
巻: 44 ページ: 1560-1562.
10.1246/cl.150680
Soft Matter
巻: 11 ページ: 1962-1972.
10.1039/C4SM02800G
Mol. Cryst. Liq. Cryst.
巻: 618 ページ: 89-94
10.1080/15421406.2015.1075821