前年度に引き続き、発光性金属錯体や発光性典型元素錯体を元素ブロックに選び、これらを構成ユニットとして特異な三次元構造を構築したり、高分子への導入を行うことで外部因子応答性をもち、発光性材料や電気化学発光材料への応用が期待される機能性高分子の創製を目的に研究を推進した。 これまで行ってきたチオフェンを導入したBODIPY類の新規合成法を開発するとともに、さらに多くの誘導体を合成し、その光学特性を明らかにした。またセレノフェンをBODIPYのα位に導入した類縁体についてもチオフェン体と同様の合成法が有用であることを明らかにし、多様なオリゴマーを合成して極めて大きな光学特性の長波長シフトの実現に成功した。さらにセレノフェン誘導体は一重項酸素発生のための増感剤となることも見いだした。また一重項酸素発生の効率は相当するチオフェン体よりも高いことを明らかにした。他には、領域内共同研究によりチオフェンBODIPYをヒアルロン酸とポリエチレングリコールからなる高分子に導入した材料を合成してこれが優れた光音響効果を示すことを明らかにした。またin vitroの実験では光音響で一般に用いられてきた色素であるインドシアニングリーンよりも優れた特性を示した。さらにこの高分子が蛍光イメージングと光音響イメージングの両方に用いることができることをマウスを用いたin vivoの実験で明らかにした。 以上のように本研究で開発した発光性色素が元素ブロックとして優れた機能を発揮することを見いだし、発光材料からバイオイメージングに渡る広い分野に応用可能な機能性高分子の創製に有用であることを実証した。
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