研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H00724
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
稲木 信介 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70456268)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイポーラ電気化学 / 電解重合 / 導電性高分子 / 高分子ファイバー / ナノ構造体 / 電気泳動 / 元素ブロック / ポリチオフェン |
研究実績の概要 |
バイポーラ電極(外部電場により駆動されるワイヤレス電極)の原理に従えば、導電体(微粒子、ワイヤー、板など)の両端において陽極部位と陰極部位を発現させることができる。これまでに、導電性微粒子をバイポーラ電極とした位置選択的な電解めっきに成功しており、新たな元素ブロックとして提案している。今年度は、バイポーラ電極上での芳香族モノマーの酸化重合を試みた結果、導電体末端から導電性高分子がファイバー状に成長し、導体間をネットワーク化することを見出した。 本電解重合系におけるファイバー成長の理由として、交流電場の印加が考えられる。低電解質濃度条件での電圧印加はバイポーラ電極を発現させながら、イオン種の泳動にも影響を与える。すなわち、バイポーラ電極化した金線末端でのEDOTの電解重合において、酸化により生じるモノマーおよびオリゴマーのカチオン種は金線末端から泳動の影響を受けて拡散しながら重合体が析出する。短い周期で極が反転する交流電圧を印加することで、ファイバー状にPEDOTが成長したと考えられる。実際、直流電場を印加した場合にはファイバー状の重合体はえられなかった。 最後に、導電性PEDOTによるネットワーク化を経て、バイポーラ電極を活性化させる連鎖モデルについて検討した。PEDOTファイバーネットワーク形成により、短い(不活性な)バイポーラ電極が連鎖的に活性化される現象を見出した。このモデルはバイポーラ電極系の微小化に向けた有望な発想といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度設定した課題である、導電性微粒子からの自発的導電性高分子ファイバー形成に関して詳細に検討し、ファイバー形成条件最適化、メカニズム解明、汎用性の検討、さらには本機構を用いた新しい導電性高分子/金属複合体創製の指針を得ることができた。 一方で、もう一つの課題であったナノ材料との複合化については十分に検討ができておらず、次年度に持ち越して詳細に検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた導電性高分子ファイバーメカニズムに関する知見は、基礎的な知見ながら今後の研究を進めるうえで重要なものである。次年度課題であるナノ材料との複合化に向けて、新たな電気化学反応を導入し、金属ナノ粒子を形成させながら導電性高分子を合成する手法を検討する。本反応機構に従えば、解決する可能性は十分に高い。
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