バイポーラ電極の原理に従えば、導電体(微粒子、ワイヤー、板など)の両端において陽極部位と陰極部位を発現させることができる。昨年度、金線をバイポーラ電極として芳香族モノマーの酸化重合を試みた結果、金線末端から導電性高分子(PEDOT)ファイバーが樹枝状に成長し、導体間をネットワーク化することに成功した。今年度は、電解反応場の空間制御により、導電性高分子ファイバーの一次元成長を試みた。 PEDOTファイバーが樹枝状成長した理由は、成長中のPEDOTファイバー先端が電極として振舞うため、四方から拡散してきたEDOTモノマーが様々な位置で重合したためである。そこで、バイポーラ電極周りのモノマー供給を制限することで、枝分かれの少ないPEDOTファイバーが作成できると考えた。バイポーラ電極となる金線をカバーガラスで覆い、数十マイクロメートルの微小空間を作成した。EDOTの交流バイポーラ電解重合を行ったところ、金線両端から直線状のPEDOTファイバーが成長した。SEM観察により、ファイバー径は10マイクロメートル程度であり、細かな枝分かれ構造を有しながらも、電場方向に一次元成長していることが分かった。微小空間の導入によりモノマーの供給を制限した結果、ファイバー側面からはPEDOTが成長しなかったためである。すなわち、電解初期には、金線末端がバイポーラ電極として駆動し、EDOTの電解重合、PEDOTファイバー成長が進行する。その後、生成したPEDOT周辺ではモノマーが枯渇し、バイポーラ電極として振舞うPEDOTファイバーの側面からのモノマー供給が途絶える。一方、ファイバーの成長進行方向からはモノマーの供給が継続的にあり、その結果、一次元成長したものと考えられる。モノマー濃度の効果、マイクロ空間の厚みの効果について種々検討しており、上記考察を裏付ける結果を得ている。
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