今年度は以下の2つの成果を得た。 1. 螺旋構造をもつジピリン金属錯体をもちいて新規ポルフィリンの合成に成功した。具体的には窒素をメゾ位に含むアザコロールを窒素架橋螺旋型ジピリンを金属を作用させることで収率よく合成できることを見出した。さらにこの手法により中心にアルミニウムをもつアザコロールの初めての合成に成功した。さらにジピリンニッケル錯体とケイ素試薬をパラジウム触媒と作用させるとケイ素がメゾ位に導入された初めてのポルフィリン分子、10-シラコロールの合成に成功した。この分子は中心金属に依存して吸収スペクトルが変化し、近赤外光を効率よく吸収する色素であることを明らかにした。このように螺旋構造をもつ分子を前駆体とすることで様々な元素を含むあらたな元素ブロックの創出に成功した。 2. 螺旋構造をもつ元素ブロックであるアザヘリセンを二つ共有結合で連結することで8の字構造をもつ分子の合成に成功した。この分子は溶液中で優れた発光を示し、さらに、高いキラル発光特性を併せもつことを見出した。理論計算および蛍光寿命測定の結果、8の字かつ環状構造となることで分子が剛直になり、発光特性の増大に繋がったと同定した。また、アザヘリセンを基質として様々なπ共役分子とカップリング反応をすることで8の字型二量体、および環状三量体の合成にも成功した。このようにアザヘリセンを元素ブロックとして多量化することにより、これまでになく優れた発光材料の創出に繋がる可能性を示した。
|