公募研究
報告者はクラウンエーテルの酸素原子の一部を光学活性リン原子に置き換えた光学活性ジホスファクラウンの合成に世界で初めて成功し、ジホスファクラウンを遷移金属錯体触媒の光学活性配位子として応用してきた。本年度の研究では、このような世界で唯一無二である報告者オリジナルの光学活性ジホスファクラウンのさらなる応用展開を目指し、「遷移金属・希土類金属・アルカリ金属・カチオン種の環内外同時取込」と「高度な不斉空間構築」の両方の特徴を有する元素ブロックとして、有機合成化学の枠を超えて材料化学分野に研究を展開する。本年度得られた成果は以下の通りである。1.様々な環骨格・環員数を有する光学活性ジホスファクラウンの合成と錯形成能評価報告者は光学活性2級ビスホスフィンを元素ブロックとして用い、種々の光学活性ジホスファクラウンの合成に成功した。例えば、ピリジンを環骨格に有するジホスファクラウンの合成に成功し、これが光学活性なカルボン酸のエナンチオマーを認識することが分かった。また、様々な環サイズを有するジホスファクラウンを合成し、それらのアルカリ金属との錯形成能を検討したところ、通常のクラウンエーテルとアルカリ金属サイズ認識能が異なることが分かった。すなわち、18員環クラウンエーテルはナトリウムイオンよりもカリウムイオンを選択的に取り込むが、報告者が合成したジホスファクラウンはナトリウムイオンに対して高い認識能を示すことが分かった。2.共役系リンカーを環骨格に有する光学活性マクロサイクルの合成光学活性2級ビスホスフィンを元素ブロックとして用い、発光性パイ共役系リンカーを環骨格に組み込んだ環状化合物の合成に成功した。円二色性スペクトル測定から、リン原子の中心性不斉からパイ共役系リンカーに不斉が誘起されていることが分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
目的としていたジホスファクラウンのアルカリ金属取込能力を評価できただけでなく、通常のクラウンエーテルとは異なるゲスト選択性を示すことが分かった。加えて、不斉認識に関しても知見を得ることができたから。新たな光学活性環状化合物を合成することができ、ゲスト包摂による発光変化、すなわちセンサーとしての応用へと展開できたため。
予備的に合成した光学活性環状化合物の合成スキームを確立させ、そのゲスト認識能を評価したい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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