研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H00735
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植村 卓史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50346079)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多孔性配位高分子 / ポリチオフェン / 電導度 / 配向 |
研究実績の概要 |
π共役ポリマーであるポリチオフェンの集合状態を制御することはポリチオフェンの持つ機能を引き出す上で非常に重要である。しかし無置換ポリチオフェンは不溶不融、つまりプロセス性がないため、それは不可能であった。一方、有機配位子と金属イオンとの自己集合反応により均一なナノ細孔をもつ多孔性配位高分子(PCP)が注目を集めている。本研究では、PCPの一次元細孔内で無置換ポリチオフェンを合成し、その後、PCPを除去することで、ポリマー鎖の配向が揃った無置換ポリチオフェン粒子の合成を行い、その伝導特性について調べた。 一次元細孔を有する多孔性金属錯体[La(1,3,5-benzenetrisbenzoate)]n (1)の細孔内でターチオフェンの酸化重合を行い、1とポリチオフェンの複合体を得た(1-PTh)。次にキレート剤であるNa4EDTA水溶液を用いて、1-PTh から1の骨格を除去し、PThを単離した。SEM測定の結果、1から単離したPThは、ホスト錯体のモルフォロジーを反映したロッド状形状を有していることが分かった。これは溶液重合によって合成されたポリチオフェンの形状とは大きく異なる。ポリマー鎖の配向を詳細に調べるために、TEMを用いたPThの電子線回折測定を行った。その結果、ホスト錯体の除去後もポリマー鎖の配向が揃ったポリチオフェン粒子が得らることが分かった。 次に、PThの伝導特性を調べるために、交流インピーダンス測定を行った。1から単離したPThは溶液重合によって合成したものに比べて、3桁程度伝導度が高いことが分かった。両者の結晶構造に違いはないことから、伝導度の違いは、ポリマー鎖の配向が大きく寄与していると考えられる。以上、PCPを鋳型とすることで、プロセスできない無置換ポリチオフェンをプロセスし、伝導度を向上させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多孔性配位高分子の細孔内でポリチオフェンを合成することで、単分子鎖から数本鎖で配列することに成功した。このような構造体は空間的に高秩序に有機高分子と配位高分子が配列しており、ここから配位高分子を除去しても、有機高分子の秩序性が保たれていることが分かった。この結果は当初予想していた以上の成果であり、多孔性配位高分子を鋳型とする新しい機能材料創製の開発につながる。
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今後の研究の推進方策 |
多孔性配位高分子の構造を変えることで、ポリチオフェンとの複合体における更なる機能性を追求する。例えば、3次元空間内にポリチオフェンを補足することで、ガスセンサーとしての利用を試みる。また、TiO2骨格を有する多孔性配位高分子を使用することで、ドナー・アクセプターが分子レベルで完全に交互になった構造体を作り出し、太陽電池への応用を進める。
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