π共役系高分子であるポリチオフェンは、導電性や蛍光などの興味深い光電子物性を示すことから、他の機能性材料とハイブリッド化することで新たな電子材料の創製を目指した研究が数多く行われている。特に、有機薄膜太陽電池の分野では、ポリチオフェンとフラーレン誘導体のハイブリッドが活性層として頻繁に用いられており、それらの混合状態を適切に制御することが望まれている。一方、金属イオンと有機配位子から構成される多孔性金属錯体(PCP)が近年注目を集めている。PCPは均一で規則的なナノ細孔を有しており、細孔のサイズ、次元性、表面環境を自在に設計できるという特徴を持つ。さらに、PCPは配位結合により骨格構造が構築されているため、ホスト骨格を穏和な条件で容易に取り除くことができる。本研究では、PCPの細孔内にC60を導入後、ターチオフェンを重合することで、PCPの細孔内にポリチオフェンとC60が分散した複合体を構築した。そのご、EDTD水溶液を用いることで、ホスト錯体を除去し、PCPとC60の混合物を得た。得られた複合体の電子顕微鏡測定からこれら二つが数重ナノメートル以下のレベルで混合していることが明らかになった。無置換のポリチオフェンはπ平面性が高く、長い共役長を有しているが、不溶不融であるためプロセスができず、このようなデバイスへの応用は困難であった。PCPを介する本手法により、成型・加工が不可能な無置換ポリチオフェンのプロセスが可能となることが期待される。 また、PCPとポリチオフェンとの複合体がNO2ガスを低濃度で識別できるセンサーとして利用できることも見出し、このようなPCPと導電性高分子の複合体が機能性材料創製のキーとなり得ることも明らかにした。
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