POSS元素ブロックを用いて様々な機能性材料の開発を行った。その中で、最も結果のインパクトが大きかった成果について述べる。 PM2.5などのマイクロメートル以下のサイズを持つ微小粒子状物質は、生体に対して健康被害をもたらすことから、大気汚染の原因の一つとなっている。これまでに微小粒子状物質を検知するための手法として、微細なフィルターを有する集塵装置や放射線計測に基づく装置が開発され、現在運用されている。実験室レベルでは電子顕微鏡による直接観察や光散乱による粒径の計測等が行われている。一方、これらの手法では大型の装置を用いることや、測定のための試料の前処理など、専門的な技術が必要とされる。これらの状況から、混ぜるだけで測定が可能な蛍光化学センサーの開発に着手した。特に本研究では、上述のように直接的に水質汚染の原因となるシリカ微粒子の検出を試みた。 これまでにPOSSが超疎水性を持ち、水中で薬剤や色素を強く吸着・保持することを見出した。今回このPOSSを架橋点として用いて水溶性のゲルを作成することで、超疎水性表面を露出させ、シリカ微粒子のような既存の高分子では接着しにくい物質の捕捉を試みた。具体的には、有機色素とPOSSをネットワーク化させた発光性有機-無機ハイブリッドゲルを合成した。このゲルは水に可溶であり、水中で強い発光を示した。さらに、想定どおりにシリカ微粒子に高い吸着性を示した。特に、微粒子の粒子径により発光スペクトルが移動することが明らかとなった。元々青色の発光を有するゲルにおいて、数十ナノメートルのシリカ微粒子存在下では発光が長波長側に移動し、一方1マイクロメートル以上の微粒子存在下では紫外領域に発光帯が変化することが示された。解析の結果、微粒子に吸着することでスポンジのように膨潤収縮が引き起こされ、ゲルの内部環境が変化し、発光特性が変わったことが示唆された。
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