研究実績の概要 |
本研究課題では、ケイ素やゲルマニウムなどの高周期14族元素や、リンなどの高周期15族元素のπ結合をdーπ電子系に組み込んだ新規なdーπ電子系の創製を目指す。 本年度は、まずπ電子系としてゲルマニウム間三重結合、ジゲルミンに注目し、そのπ結合としての性質および開環重合の条件を見出す目的で、基本的性質を明らかとすることとした。 まず、ゲルマニウム間三重結合を安定な化合物として合成・単離した上で検討を行うこととし、そのための立体保護基としてBbt基(2,6-bis(bis(trimethylsilyl)methyl)-4-tris(trimethylsilyl)methyl-phenyl)およびTbb基(4-t-butyl-2,6-bis(bistrimethylsilylmethyl)phenyl)を用いることとした。それぞれの置換基を有するジゲルミンを既知法に倣って合成し、それに対しまずエチレンおよびトランを反応させた。その結果、それぞれ1,2-ジゲルマシクロブテンおよび1,2-ジゲルマシクロブタジエン誘導体が得られた。これらは Ge=Ge部位を四員環内に含む化合物であり、目的とする[2]フェロセノファン誘導体のモデルとも言える化合物群である。 得られたこれらの化合物に対し、エチレンやアセチレンを反応させたところ、室温でもゆっくりとそのGe=Ge結合が開裂していることが示唆された。 またその他スペクトル測定やX線結晶構造解析などの結果から、Ge=Ge結合は比較的弱い結合で、光や熱で容易に開裂することが示唆された。
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