昨年度、元素ブロック色素 ピロロピロールアザBODIPYやチオフェン架橋BODIPY二量体(以下TBD)をポリエチレングリコール(以下PEG)やPEGを結合したヒアルロン酸に結合させ、様々な元素ブロック高分子を合成した。今年度はこの材料の物性と造影能を詳細に評価した。 開発した高分子材料は、元素ブロック色素が薄い疎水性層に集積化した中空ベシクル構造を有する自己集合体を形成した。この自己集合体型造影剤は構造を精査することで、市販の血管造影剤インドシアニングリーンと比較して、最大1.8倍強い光音響信号を発した。PEGと元素ブロック色素をヒアルロン酸に結合させた造影剤が最適構造であることを明らかにした。当初計画通りの成果をあげることができた。 TBDを結合したヒアルロン酸誘導体を担がんマウス(HeLa細胞)に投与したところ、これまでに開発した最も集積性の高いヒアルロン酸誘導体に比べ、約1.5倍効率良く腫瘍へ集積した。光音響撮像法により、腫瘍部位がコントラスト良く可視化できた。開発した造影剤は、光照射によりほとんど退色せず、連続利用に適した造影剤である。このように、当初計画した元素ブロック高分子材料が強い光音響信号を発し、また生体内で期待通りの高い集積性、造影能を発揮することを明らかにした。この実用的な造影剤開発に関する成果はBiomacromolecules誌に掲載された。元素ブロック高分子が生体に利用できる優れた材料であることを示し、領域に貢献した。 領域内共同研究により、元素ブロック炭素クラスター カーボンナノチューブとカーボンナノフープの複合化に成功した。scanning probe microscopyにより表面吸着型複合化と貫通型複合化の違いを見分けることに成功した。このように、計画通りの成果をあげることができた。得られた成果に関する論文を現在投稿準備中である。
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