公募研究
ポルフィリン亜鉛錯体にパラフィン性側鎖を導入し、これを構成ユニットとしてパイ共役系を拡張した一連のポルフィリンの合成を行なった。広いパイ平面を有するポルフィリンは、通常非常に結晶性が高く、このため特に材料として利用できるような高濃度条件では会合体形成に起因する発光特性の低下など、ポルフィリンが本来持っている特性を大きく損なう欠点があった。これに対して、合成した一連のポルフィリンは無溶媒状態で非晶質であり、室温付近からそれ以上の温度領域でガラス転移点を示した。この結果、ポルフィリン誘導体は固体薄膜中でも発光性を維持した。特にパイ共役系を拡張したポルフィリンでは、エキシマー形成に起因して970 nm付近の近赤外波長領域で発光を示した。このような近赤外線波長域での発光は、熱振動の影響が大きい領域であることから通常発光を観察することが困難な波長域であるとされており(「エネルギーギャップ則」)、特筆に値する発光特性を示すことを明らかにし、この一連のポルフィリン誘導体を「ポルフィリンガラス」と名付けた。さらにこのポルフィリンガラスを基盤として、超分子化学的な組織化を行うことができるユニットを導入することによって、無溶媒バルク条件で超分子ポリマーを形成した。この結果、分子の自由回転が可能な溶液中での物性から外挿した吸収特性を超えてパイ電子系を固体薄膜中で拡張することがわかった。この結果、エキシマーに起因する発光波長は1025 nmに長波長シフトした。しかもこの発光の寿命は空気中においてマイクロ秒オーダーに達し、極めて特異な発光特性であった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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