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2015 年度 実績報告書

同種・異種金属元素ブロックの機能開発と高分子化による高性能触媒材料の創出

公募研究

研究領域元素ブロック高分子材料の創出
研究課題/領域番号 15H00743
研究機関大阪大学

研究代表者

劔 隼人  大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60432514)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード多核金属クラスター / 金属間結合 / 異種金属錯体 / ラジカル反応
研究実績の概要

複数の遷移金属が近傍に配置された多核金属クラスター錯体は単核金属錯体とは異なる特異な反応性を示すことが知られている興味深い元素ブロック群の一つである。われわれは系統的な金属元素ブロックの選択的合成と反応性発現に関する研究を進めてきた。
平成27年度は、パドルホイール型2核モリブデン錯体を用いたラジカル付加反応に関して、クラスター錯体上の配位子の置換活性が与える触媒特性への影響の解明について研究を行った。金属間に多重結合を有する6族遷移金属のパドルホイール型二核錯体は、四つの架橋配位子を様々に変更することで二核金属コアの酸化還元電位を広範囲の電位幅で制御可能である。以前に、アミジネート配位子とカルボキシレート配位子という異なる種類の架橋配位子を導入した二核モリブデン錯体がハロゲン化アルキルの触媒的な脱ハロゲン化反応に対して高活性を示すことを明らかにした。そこで、三つのアミジネート配位子と一つのカルボキシレート配位子(もしくはスルホネート配位子)を有する二核モリブデン錯体をラジカル付加反応の触媒として反応性の検討を行ったところ、配位子の解離が容易なスルホネート配位子を有する二核モリブデン錯体がラジカル付加反応に対して高い触媒活性を示すことを見出した。さらに、アセテート配位子、ならびに、スルホネート配位子を有する二核モリブデン錯体を触媒としたラジカル付加反応における反応の経時変化を追跡したところ、スルホネート配位子においては反応直後に配位子が解離し、反応開始直後から高い触媒活性を示すことが明らかとなった。このように、パドルホイール型二核錯体の支持配位子の置換活性に基づいた触媒反応の制御が可能であることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

金属間に多重結合を有する6族遷移金属のパドルホイール型二核錯体は、四つの架橋配位子を様々に変更することで二核金属コアの酸化還元電位を広範囲の電位幅で制御可能である。これらの事実に基づき、これまでにはラジカル反応への応用に関する研究を行っており、平成27年度には架橋配位子の解離挙動を利用した反応制御に関する研究成果を得た。さらに、これらの研究の過程において、アキシアル位をルイス酸部位として触媒反応に利用可能であり、本クラスター錯体が「bifunctional catalyst」として作用する金属元素ブロックの一つであることが分かってきた。実際に、モリブデン二核クラスター錯体を触媒としてα-ハロカルボニル化合物の脱ハロゲン化反応において、還元剤としてビス(トリメチルシリル)ジアザシクロヘキサジエン誘導体(BTDP)を添加することで、BTDPがMe3Si源として作用し、脱ハロゲン化―シリル化反応であるシリルエノラート化合物が高収率で得られること、また、反応系中にベンズアルデヒドを添加することで、ルイス酸触媒反応である向山アルドール反応が進行することを見出した。このように、パドルホイール型二核錯体が有する反応特性を最大限に活用した触媒反応開発が可能であることが分かってきており、多金属含有元素ブロックが興味深い触媒作用を示すことが明らかとなってきた点から、今後さらに元素ブロックの触媒作用に関する研究が加速すると考えている。

今後の研究の推進方策

平成27年度の研究成果をもとに、さらに多様な触媒機能の発現を目指して異なる複数種の金属元素を同一分子中に導入した異種金属含有元素ブロックの合成を検討する。中でも、後周期遷移金属に対して強い配位挙動を示すジエン配位子に着目し、単離可能な単核メタラサイクル錯体を含金属配位子であるメタロジエン配位子とした異種金属錯体合成を計画している。予備的状況ではあるが、タンタラシクロペンタジエン錯体に対して9族や10族の金属錯体を加えたところ、メタロジエン構造内のジエンに対して9・10族金属が配位し、効率的な錯形成反応が進行することが分かった。そこで、前周期遷移金属のメタラサイクル錯体を系統的に合成するとともに、後周期遷移金属に対するメタロジエン配位子とすることで様々な組み合わせの異種金属錯体の合成を計画している。また、これらの得られた異種金属錯体を用いた反応開発において、一方の金属のみでは反応が進行せず、両方の金属を含む場合にのみ進行する触媒反応の探索を進め、異種金属元素ブロックの特異な反応性の解明に向けて研究を展開する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Mixed-ligand Complexes of Paddlewheel Dinuclear Molybdenum as Hydrodehalogenation catalysts for Polyhaloalkanes2015

    • 著者名/発表者名
      Hayato Tsurugi, Akio Hayakawa, Shun Kando, Yoshitaka Sugino, Kazushi Mashima
    • 雑誌名

      Chem. Sci.

      巻: 6 ページ: 3434-3439

    • DOI

      10.1039/C5SC00721F

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Cerium(IV) Hexanuclear Clusters from Cerium(III) Precursors: Molecular Models for Oxidative Growth of Ceria Nanoparticles2015

    • 著者名/発表者名
      Laurent Mathey, Mitali Paul, Christophe Copéret, Hayato Tsurugi, Kazushi Mashima
    • 雑誌名

      Chem. Eur. J.

      巻: 21 ページ: 13454-13461

    • DOI

      10.1002/chem.201501731

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Direct Evidence for [4+2] Cycloaddition Mechanism of Alkynes to Tantallacyclopentadiene on Dinuclear Tantalum Complexes as a Model of Alkyne Cyclotrimerization2015

    • 著者名/発表者名
      Keishi Yamamoto, Hayato Tsurugi, Kazushi Mashima
    • 雑誌名

      Chem. Eur. J.

      巻: 21 ページ: 11369-11377

    • DOI

      10.1002/chem.201501164

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Paddlewheel Mo2-catalyzed hydrodehalogenation reaction of polyhaloalkanes2015

    • 著者名/発表者名
      Hayato Tsurugi, Shun Kando, Rej Supriya, Akio Hayakawa, Yoshitaka Sugino, and Kazushi Mashima
    • 学会等名
      The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies 2015 (Pacifichem2015)
    • 発表場所
      Honolulu, Hawaii
    • 年月日
      2015-12-14 – 2015-12-19
    • 国際学会
  • [学会発表] Evidence for [4+2] cycloaddition mechanism of alkynes to tantallacyclopentadiene as a model of alkyne cyclotrimerization2015

    • 著者名/発表者名
      Keishi Yamamoto, Hayato Tsurugi, and Kazushi Mashima
    • 学会等名
      17th International Symposium on Relations between Homogeneous and Heterogeneous Catalysis (ISHHC 17)
    • 発表場所
      Utrecht, the Netherlands
    • 年月日
      2015-07-12 – 2015-07-15
    • 国際学会
  • [備考] 大阪大学大学院基礎工学研究科真島研Web

    • URL

      http://www.organomet.chem.es.osaka-u.ac.jp/

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公開日: 2017-01-06  

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