研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H00744
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木田 敏之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20234297)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノチューブ / ナノカプセル / 一次元融合 / ポリ乳酸 / ポリメタクリル酸メチル / 立体規則性 / ステレオコンプレックス / 蛍光ラベル化 |
研究実績の概要 |
イソタクチックポリメタクリル酸メチル(it-PMMA)とシンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(st-PMMA)のステレオコンプレックス膜からなるナノカプセルを作製し、それらの一次元融合によるナノチューブ形成について検討した。分子量約5千のit-PMMAとst-PMMAの組み合わせからなるナノカプセルの水分散液を基板上に滴下し、室温で乾燥することでチューブ状構造体の形成が観察された。一方、より分子量の大きなit-PMMA (分子量約1万) とst-PMMA (分子量約3万) からなるナノカプセルからはチューブ形成は認められなかった。このことより、カプセル膜中のポリマーの運動性が高いPMMAカプセルほどナノチューブ形成が起こり易いことがわかった。 また、様々な膜組成からなる高分子カプセル間の一次元融合を利用した‘元素ブロック高分子チューブ’の作製について検討するために、蛍光色素でラベル化した種々のポリ乳酸(PLA)ステレオコンプレックスカプセルを作製し、それらの融合挙動について検討した。カプセルの蛍光ラベル化は、シリカ粒子(粒径約1マイクロメートル)上へのポリL-乳酸とポリD-乳酸の交互積層時に、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)でラベル化したポリ-L-リシン(FITC-PLL)の積層操作を1段階組み込むことにより行った。得られたカプセルの水分散液を基板上に滴下し、室温で乾燥後に生成した構造体の形態を蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、いずれのカプセルにおいても通常のPLAカプセルよりも多くのチューブ形成が認められた。また、PLAカプセル膜中でのFITC-PLLの挿入位置を変えることによって、生成するチューブの長さを制御できることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の分子量のit-PMMAとst-PMMAのステレオコンプレックス膜からなるナノカプセルを用いて、それらの一次元融合によるナノチューブ形成について検討した結果、分子量約5千のit-PMMAとst-PMMAの組み合わせからなるナノカプセルを用いた時、それらの融合によるナノチューブ形成が起こることがわかった。その一方で、より分子量の大きなit-PMMAとst-PMMA の組み合わせからなるナノカプセルからはチューブ形成は認められず、カプセル膜中のポリマーの運動性がナノチューブ形成に影響を与えていることがわかった。 また、シリカ粒子上へのポリL-乳酸(PLLA)とポリD-乳酸(PDLA)の交互積層時に、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)でラベル化したポリ-L-リシン(FITC-PLL)の積層操作を1段階組み込むことで、種々の蛍光ラベル化ポリ乳酸(PLA)ステレオコンプレックスカプセルを作製した。得られたカプセルの水分散液を基板上に滴下し、室温で乾燥させて蛍光顕微鏡観察を行ったところ、いずれのカプセルにおいても通常のPLAカプセルよりも多くのチューブ形成が認められた。また、PLAカプセル膜中でのFITC-PLLの挿入位置を変えることにより、生成するチューブの長さを制御できることもわかった。このように、it-PMMA/st-PMMAナノカプセルからのナノチューブ作製に成功するとともに、チューブ形成能を制御できる蛍光ラベル化PLAカプセルの開発にも成功した。 以上のことから、当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.膜表面組成の異なる高分子ナノカプセル間の一次元融合を利用した元素ブロック高分子ナノチューブの創製 カプセル膜の最外層がポリL-乳酸あるいはポリD-乳酸からそれぞれ構成される2種のポリ乳酸ナノカプセル、あるいはカプセル膜の最外層がイソタクチックポリメタクリル酸メチル(it-PMMA)とシンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(st-PMMA)からそれぞれ構成される2種のPMMAナノカプセルを用いて、それらのナノカプセル間の一次元融合により、規則的な相分離(配列)構造をもつ元素ブロック高分子ナノチューブが形成されるかどうか検討する。チューブの表面構造を確認するために、蛍光ラベル化PLLAとPDLA, it-PMMAと蛍光ラベル化st-PMMAをそれぞれ最外層とする2種のカプセルを作製し、チューブ形成を検討する。 2.異種高分子からなるナノカプセル間の一次元融合を利用した元素ブロック高分子ナノチューブの創製 これまでにナノチューブ形成能が認められた高分子ナノカプセルを用いて、それらの混合分散液を基板上に滴下し所定の温度で溶媒を留去することにより元素ブロック高分子ナノチューブが形成されるかどうか検討する。形成されたチューブの形態はSEMならびにTEMを用いて観察する。ここで、カプセルを構成する高分子の分子量、ナノカプセルを分散させる溶媒の種類、分散液中でのカプセルの濃度、分散液を滴下する基板の種類、分散液から溶媒を留去する温度ならびに速度を変えることで、チューブの形態ならびに構成元素ブロックの配列状態がどのように変化するか検討し、様々な相分離(配列)構造をもつ元素ブロック高分子ナノチューブを創製する。
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