研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H00747
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐伯 昭紀 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362625)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 太陽電池 / ペロブスカイト / 周波数変調 / ホール移動 / 時間分解マイクロ波伝導度 / π共役高分子 / π共役分子 |
研究実績の概要 |
無機半導体・ペロブスカイト膜・有機ホール輸送層の積層構造から成るハイブリッド型太陽電池の高性能化を目指して、異種界面で優れた性能を発揮する高分子ホール輸送層の開発とその基礎過程の解明を目的とする。有機無機ペロブスカイト太陽電池は、高い変換効率から近年非常に注目を集めているが、ホール輸送層の役割、大きいヒステリシスの出現、電荷解離・電荷輸送機構は未だ不明な点が多く、デバイス性能とリンクした構造・材料・プロセス・発電機構の解明が必要である。研究代表者らが独自に開発したGHz周波数変調複素過渡光伝導度法(FM-TRMC)は、有機無機ペロブスカイトからホール輸送層(HTL)へのホール移動過程を簡便・迅速かつ直接観察できるため、優れた高分子ホール輸送材を探索するのに最適である。 本年度は、ペロブスカイト薄膜単体と新規材料からなるホール輸送層を塗布したペロブスカイト2層膜のTRMCを行った。Spiro-OMeTADのような高性能HTLでは、1 μ秒後にはペロブスカイト中のホールがすべてHTLへ輸送しているのに対し、デバイス性能の低い新規化合物2では2μ秒程度遅くなり、ピークの減衰率も小さくなった。しかし、新規化合物ではSpiro-OMeTADを上回るピーク減衰率と速い減衰時間を示し、すぐれたHTLであることが分かった。実際に太陽電池素子を作製したところ、TRMC挙動と一致する性能の相関が判明し、新規高効率HTLの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FM-TRMC法で得られた酸化チタンナノ粒子の周波数分散を独自に構築したDrude-Smith-Zenerモデルを用いて実虚部比の周波数分散を解析すると、電荷キャリアトラップの深さ(70~110 meV)と密度(全キャリア中98%程度)が得られた。この手法をペロブスカイトに適応したところ、トラップ深さは10 meV程度、さらに密度は10%程度と電荷キャリア輸送に有利な電子状態であることを解明した。また、ホール無機下地膜・ペロブスカイト(PVK)・ホール輸送層(HTL)の三層構造からなる試料のTRMC過渡伝導度の減少から、ペロブスカイトからホール輸送層へのホール移動直接定量法を確立できた。つまり、ホール輸送層塗布によるTRMC伝導度の減少量が大きいほど、ホール移動過程が効率的であることを判別できる。したがって、デバイスを作ることなく迅速に優れたホール輸送材料を探索できる手法を確立した。 ホール輸送材としては、共役高分子やハイブリッド材料等多くの選択肢が考えられる。研究代表者が確立したホール輸送効率の迅速評価を基に、他機関研究者や企業との共同研究を展開している。また、変換効率17%以上のペロブスカイト太陽電池素子の作製法を研究室内で確立し、安定な素子性能比較も可能となった。したがって、これまで蓄積した有機薄膜太陽電池デバイスの作製・評価をベースに、高性能が期待できるホール輸送層の物性評価からデバイス測定まで一貫してできる体制が整った。
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今後の研究の推進方策 |
優れたHTL材料の探索には、ホール輸送過程の直接観察と材料・物性の相関の解明が必要である。ペロブスカイトは単純な分子・イオンから構成されている一方で、同じ材料であっても、塗布に用いる溶媒や塗布手順、アニール温度などの多くのプロセス因子によってデバイスの変換効率は1%にも満たないものから16%以上まで大きく左右される。したがって、ホール輸送材の選択に加え、ペロブスカイト太陽電池は、これまでの有機薄膜太陽電池以上にプロセス探索が重要な意義を持っている。しかし、X線回折等で評価したペロブスカイト結晶の質とデバイス性能は相関しないことが分かり、通常考えうる構造・機能の関係は、必ずしも成り立たない。また、ホール輸送層との親和性は、高分子が粗いペロブスカイト結晶表面をいかに隙間なく覆うかという点も重要であるため、FM-TRMCによる安定なデバイスレス評価が有効である。今後、高分子のHOMO準位とホール移動効率との関連を明らかにすることで、高性能材料開発に向けた設計指針を確立する。さらにFM-TRMC法を用いてペロブスカイト膜・ホール輸送層のバルクおよび界面での電荷輸送メカニズムに関連する基礎過程を明らかにしていく。
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