研究実績の概要 |
本研究では、グリセロールをベースに枝分かれ状にしたポリグリセロールデンドリマー(PGD)やグリセロールデンドロン(GD)をベースとしたバナジム錯体元素ブロックを調製し、さらに自己組織化することによる触媒反応場と分子認識場の構築を目的としている。 GDを有機分子とし、無機元素にバナジウムを用いた元素ブロックの調製を試みた。三座配位である四価のバナジウム錯体から最小単位のGDであるグリセロールを配位させることにより五価のバナジウム錯体の形成をUV-VIS、1H-NMR、 ESRスペクトル測定により確認した。さらに、世代数の異なるGDを用いたバナジウム錯体を調製し、同様に確認することでGD-バナジウム元素ブロックの調製に成功した。ピロガロールを基質とした酸化反応触媒としてこれらの元素ブロックを使用したところ、1,2-ジオール配位効果によるププロガリン(酸化体)への酸化反応が増大することを見いだした。 また、自己組織化に鑑みて、GD―リン脂質(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(DSPE))誘導体を調製した。得られたGD修飾リン脂質を用いてリポソームを調製したところ、各リポソーム懸濁液のZeta電位の値から、リポソーム表面への分子修飾が示唆された。また、TEM観察からもリポソームの調製の確認ができた。GDの親水性(世代数)と水和との関連性について、細胞内取り込みとの関連性も検討したところ、世代数の低下による細胞内取り込みの向上が見られた。このことは、GD水酸基の水素結合性との関連が示唆された。 以上のように、バナジウム元素ブロックと自己組織化の両面から本研究を推進することによって、1,2-ジオールをベースとした触媒反応場の構築の基礎的知見を得ることができた。
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