研究実績の概要 |
グリセロールをベースに枝分かれ状にしたポリグリセロールデンドリマー(PGD)やハイパーブランチポリグリセロール (HPD)をベースとした新たな反応場・分子認識場の構築を目指している。今年度は、PGDとHPDの枝分かれ構造の違いに着目し、1) バナジム錯体元素ブロックの触媒反応場評価、2) 生体機能性の指標となる水の構造(自由水、中間水、不凍水)の定量化、3) 元素ブロックであるOcta-ammonium Polyhedral Oligomeric Silsesquioxanes (POSS-8NH2)を含む塩基性化合物の分子認識、について検討した。 グリセロール、PGD、HPGによりバナジウムの錯体を調製し、ペルオキシダーゼ模倣酸化反応であるPyrogallolからPurpurogallinへの酸化反応へ適用し、バナジウム由来機能である酸化反応触媒効率の検証を行った。触媒性能の指標となるミカエリス定数(Km)及び触媒効率(Km/kcat)を算出し、触媒能における枝分かれ度の効果を考察したところ、枝分かれ度が50-60%であるHPGの錯体が最も触媒効率が優れていた。 ポリエチレングリコール(PEG) ,HPG, PGDの様々な濃度の水溶液を調製し、DSC測定から、中間水量、自由水量、不凍水量を算出したところ、どちらも中間水の存在が認められ、さらに分岐度の増大に伴って不凍水量は増大した。これら不凍水量は既報の生体適合性ポリマーの値と比較して最高値を示していたことから、世界でもっとも多い不凍水を含む分子として位置づけられたものとなった。 ゲスト分子に種々の塩基性化合物を使用し、PEG, HPG, PGDとの相互作用を評価したところ、選択的な分子認識性が示されたことから、塩基性と分子サイズを見分ける分子選択性を有する新たなゲスト分子としての今後の研究展開が期待できる。
|