研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H00750
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
谷本 裕樹 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (00581331)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / ペリサイクリン / 元素ブロック高分子 / 発光材料 / 有機合成化学 / 構造有機化学 |
研究実績の概要 |
d軌道による光学特性が期待される14族後周期典型元素ゲルマニウム(Ge)と共役アルキンからなる新規分子の合成を行った。本年度は拡張型分子の基本型となるブタジインで構成される拡張型ゲルマペリサイクリンの合成と解析を中心に研究を推進した。
ブタジインのジアニオンを用いることで、目的とするブタジイン拡張型ゲルマ[4]~[8]ペリサイクリンを、世界で初めて合成することに成功した。その構造を単結晶X線結晶構造解析によって明らかにし、これまでのペリサイクリンと比べて巨大化しているにも関わらず、よりひずみが強くなっている様子が示唆された。なお、拡張[5],[6],[8]について、これまでに合成報告のある全拡張ペリサイクリンを通じて初のX線結晶解析となる。 得られた分子の分光学的解析を行ったところ、UV吸収、蛍光発光とも、これまでの非拡張ペリサイクリンとは大きく異なることが明らかとなった。UV吸収スペクトルでは非拡張型と比べきわめて大きなモル吸光係数と多くの吸収帯を示し、蛍光発光については時間変化で発光性を示すという特異な物性を示した。この予期しない現象については本年度も継続して解析と考察を行う予定である。 これら新たな物性について分子軌道計算を行ったところ、構造上の外観はこれまでの非拡張型とさほど大きく変わっていないにもかかわらず、分子軌道の広がり方がこれまでの分子とは大きく異なっていることが示唆された。このことから、環を構成するユニットが、これらペリサイクリン分子の光学的物性に大きな影響を与えることが明らかとなり、今後の機能性ペリサイクリン材料の創成における重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にある分子のうち、ブタジイン型拡張分子の研究はほぼ完了しており、もう一つの芳香環挿入型ゲルマペリサイクリンについても合成のめどがかなりたてられている。今後、より効率的な合成法と単離生成法が確立できれば速やかに本分子の機能解析に取り掛かることができ、年度内の目標としては十分に達成できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「芳香環挿入型拡張ゲルマペリサイクリン」の合成を進め、ペリサイクリンの高分子化にあたって必要とするユニットの挿入が、分子物性にどれだけの影響を与えるのかを明らかにする。その後は挿入する芳香環の置換基を変更し、ゲルマペリサイクリンのポリマー化の足掛かりの導入並びに合成を進める。
また、ゲルマペリサイクリンは分子空孔内へのイオン包接能が期待できる。そこで高分子化した際のイオン吸着材料としての展開を目指し、これらについて、合成した拡張型分子だけでなくこれまでに合成したゲルマペリサイクリンと合わせてその包接能を明らかにしていく。
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