研究実績の概要 |
本研究では、高性能半導体材料開発のため、新たな拡張 π 電子系電子不足芳香環であるアントラ[1,2-c:5,6-c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール (ATz、Chart 1) を開発し、これらを主鎖に持つポリマーを合成した。さらに、有機薄膜太陽電池へと応用することで、高効率太陽電池の開発を目指した。 1,2,5,6-テトラアミノアントラキノンを出発物質とし、塩化チオニルを用いた環化反応により、ATz のジヒドロキシ誘導体を合成した。続いて、ATz 誘導体を用い、ヒドロキシ基をアルコキシ基へと変換後、続く臭素化、2-トリメチルスタニル-4-アルキルチオフェンとの右田-小杉-Stille カップリング、最後に N-スクシンイミドを用いて臭素化をおこなうことで、異なる可溶性側鎖を有する 2 種の ATz モノマーを計 4 ステップで合成した。得られた ATz 誘導体を用い、ビチオフェンのスタニル化体との右田-小杉-Stille カップリングによる共重合をおこなうことで,目的のポリマーであるPATz4T-o12HD および PATz4T-o6OD をそれぞれ収率 96% および 89% で得ることに成功した。これらの数平均分子量を算出したところ、PATz4T-o12HD で 63.3 kDa、PATz4T-o6OD で 41.5 kDa といずれも高性能有機電子デバイスに適切な高分子量のポリマーが得られた。 続いて、得られたポリマーの太陽電池材料としての可能性を調査するため、ITO/ZnO/(PATz4T:PC61BM)/MoO3 (6 nm)/ Ag (50 nm) からなる逆型太陽電池素子を作製し、その特性を評価したところ、それぞれ最大で 3.8% および 5.7% の光電変換効率を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としていた新規アクセプターユニットであるアントラ[1,2-c:5,6-c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール (ATz) を合成することに成功し、それを含むポリマー2種類を合成した。また、それら2種類のポリマーの太陽電池材料としての可能性を調査したところ、最大 5.7% の光電変換効率を示した。
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