本研究課題では、有機電子デバイスに資する発光材料の新規設計概念を提唱するために、りん光性有機金属錯体にp型およびn型半導体部位(すなわち、正孔輸送性および電子輸送性部位)を分離して配置した両極型りん光デンドリマーの創出と、その有機電界発光素子(以下、OLED)への応用を目的としている。以下の項目に示すように、平成28年度は主として、両極型りん光デンドリマーの創出と非ドープ型電界発光素子の高効率化について検討し、以下の成果を得た。 1.ジピリドフェナジン(dppz)-白金(II)-フェニルアセチリド錯体を基盤骨格とする両極型りん光デンドリマーを用いた非ドープ型OLEDについて、その高効率化を目指した素子構造の改良について検討した。正孔輸送層と電子輸送層を発光層の陽極側と陰極側にそれぞれ挿入した素子を設計したところ、各層の直交溶媒を巧みに利用した溶液塗布法によって当該素子を作製することに成功し、キャリアバランスの改善によって外部量子効率を向上させることに成功した。 2.トリスシクロメタル化イリジウム錯体を基盤とし、そのシクロメタル化配位子にカルバゾール系正孔輸送性デンドロンとホスフィンオキシド系電子輸送性デンドロンを導入した両極型りん光デンドリマーの合成に成功した。コア錯体部分がfacial構造の異性体は、正孔輸送性デンドロンと電子輸送性デンドロンが分離して配置されたヤヌス型構造を有することが分子モデリングから明らかとなった。当該デンドリマーを発光層に用い、積層構造を有する非ドープ型素子を溶液塗布法で作製することにも成功し、電圧印加によってコア錯体由来の青色電界発光が得られた。電子輸送性デンドロンをもたない参照デンドリマーを用いた素子との比較から、電子輸送性デンドロンの付与は外部量子効率の向上に寄与することがわかった。
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