BCN材料の炭素に対するホウ素、窒素の比率が大きくなれば、窒化ホウ素のように絶縁体となり、また炭素の比が大きければグラファイトのような導電性を示す。低BN比を持つBCN材料は炭素比が大きくいため導電性が高く、電極等の材料として有望であると期待されている。本年度は昨年度に引き続き、前駆体としてボラベンゼン-ピリジンとボリルアミノベンゼンに着目して研究を行った。ボラベンゼン-ピリジン錯体を前駆体として、前年度の研究から得られたBCN材料をより高温で焼成した。焼成後の黒色固体のX線回折測定からは、高温焼成によりグラファイト構造が拡張したことが示唆された。一方でX線光電子分光測定により高温焼成後のB/C/N比を見積もったところ、このB/C/N比は1/10/1に近づくことがわかった。この比はボラベンゼン-ピリジン錯体のものと一致しており、ボラベンゼン-ピリジン骨格を反映したBCN材料が得られていることを示唆している。またボリルアミノベンゼンを低温で焼成したサンプルでは、結晶性の低いBCN材料が得られること、そのB/C/N比は前駆体の炭素含有量を反映してBNドープ量の少ないBCN材料であることが示唆された。さらにより高温での焼成から得られたサンプルのXPS測定を行ったところ、そのB/C/N比は1/23/1であると見積もられた。この値は先述したボラベンゼン-ピリジンの焼成サンプルのB/C/N比とは異なっており、前駆体の構造によりB/C/N比を調節できることを示している。またここで得られたBCN材料の導電性について測定を行ったところ、低温での焼成体ではほぼ絶縁体であることが示されたが、高温で焼成することで飛躍的に導電性が向上することを明らかにした。これらの成果からホウ素窒素含有小分子を前駆体とすることでBCN材料のB/C/N比や導電性をチューニングできることが示された。
|