Si-H基を有するかご型シロキサン(H8Si8O12)とアリル基修飾型のアゾベンゼンのヒドロシリル化反応により、1頂点にアゾベンゼンが結合したかご型シルセスキオキサンを合成し、さらに残り七頂点のSi-H基を Et2NOH触媒を用いてエトキシ化した。この分子(以下Azo-D4R)の加水分解・重縮合反応により得られる生成物の構造や光応答性について検討した。Azo-D4RをTHF溶媒中、酸性条件下で一定時間攪拌して得られた溶液をガラス基板上にスピンコートすることによって、黄色透明薄膜を得た。XRDパターンより、3.5 nmの周期構造に対応する鋭い回折ピークが観測され、また2D XRDパターンおよび薄膜断面のHAADF-STEM観察によって、アゾベンゼンを内側に向けたシリンダー状集合体からなる、歪んだ二次元ヘキサゴナル構造の形成が確認された。得られた薄膜にUV照射を行うと、UV-Visスペクトルにおいて、345 nm付近のピークの減少と440 nm 付近のピークの増加が見られ、trans体からcis体への異性化が確認された。また、可視光照射により迅速に元のスペクトルに戻り、可逆的な異性化が可能であることが示された。従来のアゾベンゼン修飾アルコキシシランより得られるラメラ構造体と比較して、異性化の程度が大幅に向上した。また、メソポーラスシリカにアゾベンゼン修飾シランをグラフトした報告があるが、それらと比較しても明らかに高い異性化率を示した。これは、かご型シロキサンを用いたことによるアゾベンゼンが異性化するための空間が確保できたであるためと考えられた。
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