ポリマーナノチューブ(PNT)は、分子認識、物質の輸送、反応場としての利用が期待できるナノ空間材料である。我々は、PNTに導入する機能性分子として、光アンテナ機能を持つポルフィリンに着目した。ポルフィリン含有モノマーをポーラスアルミナテンプレート細孔内で電解重合することで、ポルフィリンポリチオフェンナノチューブ1-PNTを合成した。次に、1-PNTを走査型電子顕微鏡 (SEM) と走査型透過電子顕微鏡 (STEM)を用いて観察したところ、直径約250 nm、空孔約190 nm、膜厚約30 nmのチューブ形状であることが分かった。1-PNTのUV-vis スペクトルを測定したところ、439 nm にポルフィリンのソーレー帯に基づく吸収、500~700 nm 付近にポルフィリンのQ 帯およびポリチオフェンに基づく吸収を観測した。光アンテナ機能を持つポルフィリン、ポリチオフェンおよび光触媒であるキラルTiO2 ナノ粒子を複合させたキラル有機-無機ハイブリッドナノチューブを合成することを目的として、ターチエニルポルフィリンとキラルTiO2 ナノ粒子とのテンプレート電解共重合を行った。その結果、直径約220 nm のキラルTiO2ナノ粒子ハイブリッドナノチューブの生成を確認した。そのUV-visスペクトルを測定したところ、427 nmにポルフィリンのソーレー帯に基づく吸収を、500~700 nm付近にポルフィリンのQ帯およびポリチオフェンに基づく吸収を観測した。このハイブリッドナノチューブのCDスペクトルにコットン効果が確認されたことから、キラリティーを有していることが分かった。このような、キラルハイブリッドナノチューブの合成は他に例がなく、特異なキラルナノチューブの中空空間を利用した、不斉認識や不斉光反応への新たな展開が期待できると考えている。
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