研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H00771
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
渡瀬 星児 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 電子材料研究部, 研究主任 (60416336)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 元素ブロック / ポリシルセスキオキサン / 金属錯体 / 分子間相互作用 / 薄膜材料 / 半導体素子 / 整流素子 / 電流注入発光素子 |
研究実績の概要 |
ポリシルセスキオキサンはシロキサン骨格とケイ素に直接結合した有機基を一つ有するケイ酸系高分子で、無機材料的特性と有機材料的特性を併せ持つことが特徴である。本課題では、従来絶縁体として扱われてきたポリシルセスキオキサンを元素ブロックとのハイブリッド化により半導体化し、電子デバイスに応用することが目的である。今年度は、サマリウムを発光中心とする電流注入発光素子と、ポリシルセスキオキサンのn 型半導体化についての検討を行った。 サマリウム錯体を元素ブロックとしてカルバゾールを導入したポリシルセスキオキサンPCTSQとハイブリッド化し、発光特性の改善と電流注入発光素子への応用について検討した。分子間相互作用を介してPCTSQとサマリウム錯体とをハイブリッド化すると、PCTSQ由来の青色発光は消光され、サマリウム錯体由来の深赤色発光のみが観測された。このことから、PCTSQが吸収した光エネルギーが配位子を介してサマリウムへとエネルギー移動され、増感発光を示すことがわかった。このハイブリッド薄膜を発光層に用いて電流注入発光素子を作製したところ、サマリウム由来の電流注入発光が得られることがわかった。 ポリシルセスキオキサンのn型半導体化を目指して、分子間相互作用を介して電子輸送性のアルミニウム錯体Alq3のハイブリッド化について検討した。塗布・焼成により作製したp型のニッケル酸化物薄膜上に、ポリフェニルシルセスキオキサンPPSQとアルミニウム錯体(Alq3)とのハイブリッド薄膜を積層した素子は整流性を示し、ダイオードとして応用できることがわかった。このことから、電子輸送性のアルミニウム錯体Alq3をハイブリッド化することで、p型のニッケル酸化物半導体に対してn型半導体として振る舞うことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子間相互作用を介して電子輸送性の金属錯体をポリシルセスキオキサンにハイブリッド化する方法でポリシルセスキオキサン薄膜の電子輸送性を付与できることがわかり、次年度に予定通りに検討を進めることができるため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ポリシルセスキオキサンの半導体化について引き続き検討を行う。既存の酸化物半導体と半導体ポリシルセスキオキサンとの積層によるハイブリッド半導デバイスの作製について検討を進め、整流素子、電流注入発光素子のみならず光電変換素子などの半導体デバイスへの応用を目指して検討を行う。これまでとは違う元素ブロックを用い、適宜、化学結合、分子間相互作用を介した様々な半導体ポリシルセスキオキサンを開発し、デバイス化の際に選択できる材料を増やすことで、プリンタブルなハイブリッド半導体材料としての定着を目指す。
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