研究領域 | 重力波天体の多様な観測による宇宙物理学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
15H00779
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
廣林 茂樹 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (40272950)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重力波 |
研究実績の概要 |
重力波に関する超高精度時間―周波数解析技術のノイズ耐性の検討を行った。NHAを用いて超高精度に時間周波数空間で,計測信号特性を表現させる技術の開発を行う。一般に,周波数解析(Short Time Fourier TransformやWavelet含む )では,周波数分解能と時間分解能を両立させることは難しいが,NHAでは分析窓形状や分析長に依存しにくいため,周波数分解能と時間分解能の両立が他の手法に比べ容易で,高精度に重力波をはじめとした関連信号を解析できる可能性がある。従来のSTFTでは,解析窓の影響でサイドローブが発生してしまい,正確に解析することが出来ない。また,EMD(経験的モード分解)に基づくHHTでは,スペクトルの独立性が保証できず,ノイズ耐性が悪くことが知られている。 一方,NHAは時間分解能と周波数分解能を両立でき,ほぼ音源信号の周波数特性を追従できることから、連成信号以外のバースト波などの重力波にも,NHAを用いて,解析精度や時間周波数領域での可視化の可能性について検証した。さらに,重力波を検出する際のノイズの耐性の,ノイズ耐性の評価も行った。 NHAでは周波数分解能の高さから,ノイズも音源と独立したスペクトルとしてセンシングできるので,ノイズ環境下においても大きな成果が見込める可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年12月、重力波を解析するにあたり、計測時に混入するラインノイズの影響が、解析結果に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。研究の遂行上、LIGOで観測された実際のラインノイズの影響を白めるための検証・実験を行う必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
主として、以下の2点に関して検討を行う。 (1)超高性能リアルタイム解析技術 申請者が発明したNHAは,超精度に時間・周波数空間を可視化できる唯一の方法であるが,計算時間が掛かることが大きな問題である。既に,申請者の新学術公募研究で,KAGRAでの計測データのリアルタイム解析の予備検討を行ってきたが,フィルタバンクを応用し,狭帯域の帯域に信号を分割することで,計算時間を大幅に削減することができる見通しを得た。下の表にも示す通り,2秒程度の計測信号に対し、フィルタバンクを用いた帯域分割によってデータ数を縮小し,解析精度を落とさずにNHA計算をかけることでリアルタイムに迫る計算ができることがわかってきた。NHAの用途の多くはオフライン解析が主であるが,この帯域分割処理は並列計算と相性も良くオンライン解析や,オフライン解析の時間短縮のため,NHAの組み込み高速計算技術の開拓も行う。 (2)重力波の微細な周波数変化を想定した検証実験 ドップラー効果などの複雑な環境で計測された信号に対し,環境変化に起因する微小な変化を捉えるための実験を行う。コンピュータシミュレーションにより,変化量を与え,解析できる変化量を定量に検証する。さらに,KAGRAの計測データなどの解析を行い,実証実験も行う。
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