研究領域 | 重力波天体の多様な観測による宇宙物理学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
15H00783
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木内 建太 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (40514196)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 重力波 / 数値相対論 / 宇宙物理学 |
研究実績の概要 |
2015年9月14日アメリカのadvanced LIGOが、世界で初めて連星ブラックホール合体からの重力波を直接検出した。GW150914と名付けられたこのイベントは、重力波存在の直接証明および連星ブラックホールの存在証明と認識されている。 連星ブラックホールに加え、連星中性子星もしくはブラックホール-中性子星連星の合体も地上型重力波干渉計の有望なターゲットである。特に今回連星ブラックホールの存在が確認されたことから、未発見のブラックホール-中性子星連星も近い将来観測される可能性が高い。ブラックホール-中性子星連星合体からの重力波が観測されれば、この天体の存在証明が与えられるとともに、核物質状態方程式、ショートガンマ線バーストの駆動源、宇宙の重元素の起原について知見が得られる可能性が高い。 本課題は数値相対論と呼ばれる数値シミュレーションにより、ブラックホール-中性子星連星合体の現実的な描像を解明することを主目的としている。具体的には中性子星磁場とブラックホールのスピンの効果に着目し、世界最高解像度シミュレーションを実行した。 研究結果は論文としてまとめられ、学術誌に掲載された。これ以外にも関連する研究課題にて主著論文として1件、共著者論文として1件発表済みである。また、国際会議における招待講演を2件、一般講演を4件、国内学会における一般講演を2件行い、研究成果の発信を行った。さらに現在本課題について研究を進め、研究成果をまとめた論文を執筆中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はブラックホールのスピンが軌道角運動量に対して平行な場合について行ったシミュレーション結果を論文にまとめた。研究成果を要約すると潮汐破壊後形成された降着円盤内部で磁気回転不安定性が起こる。この結果生み出された磁気乱流起源の粘性により、角運動量輸送と質量降着エネルギーの熱化が効率的に起こる。この機構により降着円盤風が駆動されることを突き止めた。これは現在までにあまり精査されていなかった磁気流体効果がブラックホール-中性子星連星から質量放出には本質的に重要であることを示したと結論付けられる。H27年度9月に発表された論文は既に引用数が10を超えていることから、この研究の注目度が高いことが伺える。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度は上述した研究成果に加え、ブラックホールスピンが軌道角運動量に対して傾斜している場合についてもシミュレーションを実行した。国立天文台のスーパーコンピューターを全システム使用することで、世界最高解像度の数値相対論―磁気流体シミュレーションを実行した。データを解析したところ、定性的にはブラックホールスピンが軌道角運動量と揃っている場合と同じメカニズムで降着円盤風が駆動されることが判明した。現在、論文を執筆中である。また、京の一般申請課題が採択されたため、連星パラーメーターを変え系統的なシミュレーションを本年度実行する予定である。
|