研究実績の概要 |
突発的なX線増光現象を素早く捉え、衛星で瞬時に観測することで、重力波現象のような希少なイベントの正体にいち早く迫る事が可能となる。必ずしも最先端の検出器を搭載した衛星でなくても、素早さがあれば、大発見に繋がる可能性があるという意味で、多様な衛星に有用な機能であるが、これまでは衛星地上間通信の困難さから、日本の科学衛星では仕組みとして確立していない。これを、既存の将来衛星DIOS(ダークバリオン探査衛星)をモデルケースとして、様々な手法の検討を行った。DIOS衛星としては、X線望遠鏡を拡大し高速姿勢制御を導入することで、銀河間高温ガスを放射と吸収の両方から観測し、領域の密度と体積を解くことに役立つ。検討した結果、1. NASAのリレー衛星は極めて高価で、専用の受信機が必要であること、2. JAXAの地上局は15周回(高度550km想定)のうち10回はどこかの局でコマンドが打てるが、即時性のためには予約が必要な事、3. 商用の S-band, X-band は運営維持経費がかかる事、4. 商用の VHF, UHF帯であれば安価だが、科学衛星の多くは赤道軌道でないため (高度 約500km, 傾斜角約30度)、地上局が大量に必要になることがわかった。これをもとに、今回はイリジウム衛星通信の適用可能性を検討した。結果、ハードウェアのサイズ、重量、宇宙実績、電力などは超小型衛星で実績があることから、十分可能性があることがわかった。高度が高くなるほど、イリジウム衛星が該当衛星を囲むビームサイズが小さくなり、可視時間が短くなる事が難しい点であるが、1日あたりの可視回数は約25分に1回程度で、約40秒の可視時間が現れる。通信可能なイリジウム衛星の数はほぼ常に1機だけであるが、姿勢情報だけを uplink することは原理上は可能なことがわかった。
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