本研究は,重力波データ解析における統計的方法論の整備を目的としています.典型的な困難に,定常雑音の非ガウス性,非定常雑音があります.ここで,時空の歪みによる光路差を干渉縞の動きとして計測し,信号でないものを雑音といいます.本研究では,有意性の評価,定常雑音の定量,理論値に基づく信号の検出と母数推定,非定常雑音と信号の特徴づけ,雑音源の同定,理論値に基づかない信号の検出と母数推定,といった重力波データ解析における重要な課題について,正当性のある一貫した方法を開発することを目指しています.iKAGRAが2015年3月末から実施され,そのデータ解析にも着手しました.検討した課題は多岐に渡りますが,ここではノンパラメトリック・ベイズ統計によるクラスタリングの周辺と検出の方法論の検討について報告します.前者については,一般論になりますが,母数の推定に関する理論的な問題を検討しました.後者については,重力波データ解析の具体的問題について検討しました.1つは,重力波チャンネルと環境チャンネルの関連から雑音源を同定することなどを目指した非線形な関連の検出についてです.非線形な関連の検出を目的とする距離相関やMICと呼ばれる手法では,重力波データ解析において問題になる非線形な関連を確かに検出できることが分かりました.もう1つは,非ガウスな定常雑音の特徴付けについてです.重力波データには裾の重い分布に従う時間帯や周波数帯がありますが,そのようなデータにガウス性を仮定する検定は反保守的になりますので,t分布により特徴づけることを検討しました.
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