研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
15H00792
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鳥谷部 祥一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40453675)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子ロボット / 分子モーター / コロイド / DNAオリガミ |
研究実績の概要 |
自律的な人工微小ロボットの実現は,ナノテクノロジーの目標の1つである.ロボットであるからには動かしたいが,アクチュエーターを造るのが難しい.一方で,生体内では超高性能のアクチュエーターである分子モーターが働いている.そこで,この分子モーターをアクチュエーターとして利用することで,自律的な分子ロボットの実現を目指した.分子モーターはタンパク質であるため,その構造を自由に変えることは難しい.一方, DNAオリガミは,ナノスケールの構造を容易に造ることができる技術であるが,動的に動かすことは難しい.この2つの欠点を補い,その利点を組み合わせることで新規のナノデバイスの実現を目指している. 我々は,船体となるマイクロメートルサイズの粒子に,アクチュエーターとして回転分子モーターである F1-ATPaseの固定子を接着し,その回転軸に DNAオリガミで造ったスクリューを結合することで,バクテリアのように遊泳するロボットをデザインした.まず,ミクロスケールで効率よく遊泳するために,バクテリアのべん毛を模したらせん形状のスクリューを設計した.この構造は比較的大きくなってしまうのだが,DNAオリガミで造ったねじれた円柱を重合させることで,らせん状の構造体を設計通りに実現することができた.構造は AFM等で確認した. さらに,このスクリュー, F1-ATPase, プラスチック粒子を組み合わせて構造体を組み立てることに成功した. F1-ATPaseの燃料であるATP分子を加えると,この構造体がゆっくりと移動する様子を観察できた.ただし,まだサンプル数が少なく,さらなる確認が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラスチック粒子,生体の回転分子モーターである F1-ATPase, および,DNA オリガミで作成したスクリューを組み合わせて,遊泳するバクテリア型ロボットを実現した.平成 27年度の研究実施計画はほぼ達成することができた.ただし,遊泳速度が遅く,より高速に回転する F1-ATPaseを利用したり,複数の分子モーターによる駆動を行うなど,今後の改良が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
平成 28年度は,まず,大腸菌の F1-ATPaseなど,より高速に回転する分子モーターを用いたり, Janus粒子により粒子片側だけに複数の F1-ATPaseを結合することで,遊泳速度を上げる.その後,「感覚を持つ分子ロボット」の実現を目指す.スクリューに動的に変化する部位を導入し,化学物質,熱,光などの外部刺激によりスクリュー形状が変化し,推進力を失うようにする.これにより,外部刺激があると遊泳がストップしてブラウン運動でその場で漂うという,原始的な走性を実現可能だと期待してる.
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