研究実績の概要 |
近年,細胞を材料として扱う試みが増え,分子ロボットのパーツとしても有用性が期待される。サブミリサイズの細胞組織の構築はトップダウン手法が多く検討されているが,コストと大容量化において不利な課題を残す。そこで本研究では,水系において超分子会合し,配向性を伴って異方的ナノ会合体を形成する生分解性ブロックポリマーを細胞培養系に添加し,その形状異方性よって細胞の集合を制御するボトムアップ手法を検討し,秩序的な三次元複合組織の構築を目指す。また,ポリマーの選択的分解によってポリマー細胞複合体(PCC)の変形を誘導し,これを,スライム型分子ロボットの動力として応用することを検討する。 平成27年度は,まず既報[Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 4508-4512]でナノチューブを形成することを確認しているポリマーの類似体となるメソゲン様分子4UMBAを含むブロックポリマーを合成し,疎水ブロックの結晶性によってナノ構造体のアスペクト比が変化すること,ポリエチレングリコール(PEG)以外の親水性ポリマー(PCEA)[Nature Chem. 2011, 3, 409-414]の導入が可能であることを見出した。また,異なる含4UMBAブロックポリマーの混合によって,形状,特にアスペクト比分布の均一化がある程度可能である予備的知見も得られた。 そして,これらのナノ会合体のヒト線維芽細胞(NHDF)の培養系への添加効果についても調べ,新奇な知見が得られたため,特許出願の準備を進めており,また,5月にカナダで開催される10th World Biomaterials CongressのLate-Breaker Abstracts on Emerging Concepts in Biomaterials Scienceとして審査後,口頭発表を認められ,発表を予定している。
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