公募研究
本研究では,水系において異方的ナノ会合体を形成する生分解性ブロックポリマーの,その形状異方性によって細胞の様々な機能を制御する,細胞外基質(ECM)型分子ロボットとしての展開を目指す。また,生成するポリマー細胞複合体に対し,ポリマーの選択的酵素分解によって変形を誘導し,これをスライム型分子ロボットの動力として応用することも検討する。平成27年度には,水中で異方性の会合体を形成する含メソゲン様分子生分解性ブロックポリマーを合成し,ヒト線維芽細胞(NHDF)の培養系への添加を実施し,増殖と伸展挙動が無添加系と比べて有意に高いポリマーが存在することを見出した。平成28年度は,まず細胞実験の再現に取り組んだが,この過程で,水中で調製された会合体の集合状態がタンパク質やイオンが存在する培養液中での安定性に寄与し,結果として細胞の増殖・伸展作用の発現の有無に大きく関与することが分かった。そこで,再現性の高い会合体の調製法を確立し,NHDFでの細胞実験の再現と,新規に検討したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)培養系での同様の効果を確認した。さらに,NHDFのスフェロイド培養への添加では,異方的な三次元の細胞凝集作用が確認された。幾つかの不測的な技術的問題により,ポリマー細胞複合体の酵素分解挙動を調べるには至らなかった。また,通常の細胞培養で使用する血清タンパク質を使用しない無血清条件でのナノ会合体添加効果について調べた結果,会合体添加による細胞増殖・伸展が確認され,以上の結果より,本研究において生分解性ポリマー会合体が単独で細胞機能を制御し得る分子ロボットとしての可能性を示したことから,関連技術について特許出願を行い,論文発表準備に取り掛かかっている。今後は,ナノ会合体の作用機序の解明に向けて,分子生物学的アプローチによる解析に取り組み発展研究につなげていく所存である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Polm. J.
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10.1038/pj.2016.80
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https://polymorg.yz.yamagata-u.ac.jp/laboratory/all/labo_f/