研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
15H00800
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 徹也 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90513359)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ノイズ耐性 / ゆらぎ / 分子ネットワーク / 論理演算 |
研究実績の概要 |
本年度は、素過程の確率性に対して、頑健に論理演算結果を出力する演算素子(以下ベイズゲート)の理論構成を元に、ベイズゲートが実際にどの程度まで演算素子としてノイズに強いのか、そして既存の手法と比較してどの程度の優位性を持ちうるのかを検討した。 対象とするベイズNOR/ANDゲートについては、申請者の先行研究を元に情報理論的にその構成を導出した。得られた理論式と数値シミュレーションに基づき、ベイズゲートと先行研究で提案された確率共振に基づくゲート(以下確率共振ゲート)の比較を行った。パラメータを最適に制御した場合、確率共振ゲートとベイズゲートはほぼ同程度の正確性を有するがベイズゲートのほうが高い精度を実現できることを確認した。またゲートのパラメータを固定して、ノイズ強度を変更した場合、確率共振ゲートは最適なノイズ強度からノイズが強くなっても弱くなってもその性能が落ちるのに対して、ベイズゲートは、ノイズ強度が弱くなれば単調にその精度が上がることが確認できた。 また素子のエラーを、ノイズによる影響と、入力への追従性遅れによる項に分解して、多次元的にエラーの性質を調べることとによって、ベイズゲートにおいてこの2つの間に明確なトレードオフ関係があり、かつ最適なパラメータはこの2つがバランスする領域であることを確認した。 さらにシステムパラメータの変動に対するエラー評価も実施し、同様のトレードオフ関係があることを数値的に確認した。 これらのベイズゲートの性質を、ノイズ無しの演算環境を仮定した演算様式と比較し、優位性を評価した。その際、システムに混入するノイズの入り方によって解釈が変わりうることが判明したため、ノイズ混入の仕方を制御する1変数パラメータを導入し、包括的に性能の評価する方法を考案した。 また、ベイズゲートを分子反応などで実装する方策についての検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベイズゲートのノイズ耐性評価の際に、システムに混入するノイズの入り方によって解釈が変わりうることが判明したため、その解決のために、ある程度の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
理論的側面からベイズゲートが高いノイズ耐性を持つことが証明できた。今後は、これらを具体的な実装に落とし込んでゆく際に、実装ごとに生じる様々な制約を考慮した設計を考えゆくことが必要となる。
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