研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
15H00808
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
坂本 隆 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (80423078)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | DNA / 光架橋 / 低分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子ロボットを構成する種々の分子デバイス(ペプチド・ゲル・リポソーム等)が、情報伝達の役割を担うと期待されるDNAを光照射により自在に捕捉・放出できるよう、新たなDNA光架橋素子を開発することを目的としている。これまでにDNA結合性ペプチドに3-シアノビニルカルバゾールを導入することでペプチドにDNA光捕捉・放出機能を付与できることを見出してきたが、分子サイズが比較的大きいことから、その応用範囲はペプチドに限られる。 そこで平成27年度は、より分子サイズが小さく、他の分子デバイスへ容易に適用できる新たなDNA光架橋素子を開発することとした。DNA結合性の低分子化合物に3-シアノビニルカルバゾールを修飾した、DNA光架橋素子の合成を試み、逆相HPLCによる精製後、1H NMR、13C NMR、MALDI-TOF-MSスペクトルにより同定したところ、目的のDNA光架橋素子の合成に成功したことが明らかとなった。また、合成した新たなDNA光架橋素子と、種々の構造および配列を持つDNAとの光反応性を評価した。具体的には、DNA光架橋素子と種々のDNAとの混合溶液に366 nmの紫外光照射後、変性ポリアクリルアミド電気泳動を行い、DNAの泳動度の変化から光反応性を評価した。結果、ある特定の配列および構造を持つDNAの場合のみ、泳動度が大きく変化したことから、DNAの構造および配列選択的に光架橋反応が進行することが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA捕捉・放出素子の小型化を目指し、DNA結合性低分子にDNA光架橋活性のある3-シアノビニルカルバゾールを導入した新たなDNA光架橋素子を設計し、合成に成功した。これらのDNA光架橋素子が特定の配列を持つDNAと光架橋可能であることが示された。合成したDNA光架橋素子には、さらなる修飾が可能な水酸基が含まれていることから、コレステロールや脂質等の修飾によりリポソームやゲルの機能化が可能になると期待できる。 以上のことから、研究は「概ね順調に進展している」ものと判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られた新規DNA光架橋性素子を用いて、まずはリポソームにDNA 光捕捉・放出機能を付与する。そのためリポソームにアンカリングすることが可能なコレステロールあるいは脂質を新規DNA光架橋性素子に導入する。さらにこれを含むリポソームを調製し、蛍光修飾DNAとのリポソーム表面での光架橋(DNAの捕捉)を蛍光顕微鏡により観察する。光反応に要する時間、新規DNA光架橋性素子の混合比等の最適化を行い、光によるDNAの捕捉・放出が可能な機能化リポソームを得る。
|