研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
15H00812
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 高廣 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50378535)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 光受容蛋白質 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
光は、その直進性・高速性・非侵襲性から生体反応の人為的な制御に使用される。そのため、生体における光受容システムの改変は、人工的な分子システムを制御する「入力系」に利用できる可能性がある。動物のロドプシン類は光刺激でGタンパク質などを活性化するため、それを改変することで種々の細胞内シグナリングを制御できることが期待される。そこで本研究では、光や熱に安定な全トランス型レチナールを結合できる動物型ロドプシン類などのレチナールタンパク質を改変して、人工的な分子システムを制御する分子ツールを提供することを目的とする。本年度は以下の解析を行った。 1.Opn5L1は、動物型ロドプシン類の中で初めてフォトサイクルによって活性が制御されることが明らかとなり、繰り返しの光刺激に対応できる可能性がある。このフォトサイクルは、発色団レチナールとタンパク質との共有結合の形成と崩壊によって起こることがわかった。またこの特異な分子メカニズムに関わる重要なアミノ酸残基も同定した。 2.全トランス型レチナールを結合するOpn5などのレチナールタンパク質について、結合するレチナールのアナログを用いて吸収波長特性を大きく改変することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フォトサイクルを形成する動物型ロドプシンは、同じ光刺激を繰り返し行うことで何度も活性を制御することができる可能性があり、他の実験系に応用する汎用性が高いと考えられる。このメカニズムの解析は、その分子特性の改変に非常に有用であり、次年度の計画につなげることができる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、動物型ロドプシンOpn5グループを中心に、レチナールタンパク質を用いて人工的な分子システムを制御する分子ツールを作製する。そのため、以下の実験計画を行う。 1.動物型ロドプシン類においてフォトサイクルによって活性を制御することが初めて明らかになったあるOpn5サブタイプについて、その活性制御の分子メカニズムを明らかにした。そこで、その分子メカニズムを元に、フォトサイクルの時定数を改変する。 2.Opn5グループなどレチナールタンパク質について、吸収波長特性を改変する。結合するレチナールのアナログとタンパク質部分の変異を組み合わせることを検討する。そして、レチナールタンパク質をベースとした分子ツール作製の戦略を構築する。 3.作製したOpn5ベースの分子ツールを用いて、培養細胞やリポソームなどの内部の分子システムを光で制御できるか検討を行う。
|