研究実績の概要 |
電気化学駆動できるロボット原形体の動きに焦点を絞った研究を推進した。この目的のため、電極表面上の油滴、酸化還元相転移で可逆伸縮するヒドロゲル、及びこれらに組み込むための動的ナノ粒子集合体をターゲットとした。 金単結晶Au(111)電極表面上に載せたヘキサデカン(HD)及び1,2-ジクロロエタン(DCE)小滴の変形を電位制御するファクターを精査した。いずれの油滴においても、水相中にAu電極に特異吸着するアニオンを溶解すると、接触角変化範囲が拡大し、ポジティブな電位領域での接触角上昇が際立った。少量のHDは微小滴を形成し、電極表面に展開する条件を持たなかった。界面活性剤の添加は、HD滴の変形のヒステリシスを抑制したが、動きを遅くした。DCEは水と混ざり合わないが高い相溶性をもつ。DCEに電解質を加えると、動きはスムーズになった一方で、接触角変化幅は小さくなった。これらの観測のため、in situ電気化学蛍光顕微測定法を発展させた。 ポリ-L-リジンにビオロゲンをペンダントし、これを架橋して、様々なビオロゲン含有率をもつヒドロゲルを合成した。ビオロゲンは、還元するとほとんどが狙い通りにダイマー化し、集積化することを示唆するデータが得られた。ゲルは良好な電気化学応答を示したが、電極からの電子移動による状態伝搬には改善の余地があり、その高速性向上の課題が残った。2 mm程度のゲル断片は、還元剤と酸化剤により5分以内で膨張・収縮が飽和した。最大、長さスケールで3/10までの収縮が確認され、分子ロボットのアームの柄となる材料としての十分な特性を持つことがわかった。 電極からの電子注入で電荷を変化させる金ナノ粒子(Au-NP)集合体を合成する試みを行った。安定な電子移動と静電反発を実現させ、上記のゲルに組み込める可能性を示唆した。
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