研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
15H00825
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
礒川 悌次郎 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336832)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セルオートマトン / 非同期セルオートマトン / 計算万能性 / ゲルオートマトン / マクロセルモデル / 周期状態遷移 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,分子規模の要素により構成された素子を用いた情報処理機構に関する研究を展開することを目的としている.このような機構は分子サイズのロボットシステムの実現には必要不可欠である.情報処理機構の実現させる方法については,ゲルオートマトンと呼ばれる高分子の形態制御ならびに分子の拡散現象に基づく情報処理の枠組みを用い,さらに本研究申請者らが提案してきたマクロセルモデルを適応させることを検討している. 今年度においては次の二つの課題について研究を展開した.一つはゲルオートマトンに適応したマクロセルモデルに基づくセルオートマトンモデルの構築である.本セルオートマトンについては,ブラウン運動に基づく回路素子であるブラウン回路の模擬を行うために,各回路要素についての実装を行った. もう一つの課題はDNA分子反応系に適応した各セルの状態が周期的にのみ変化可能という制約を持つ非同期セルオートマトンの構築である.この計算モデルについては申請書提出時には計画されていなかったものであるが,今年度においてDNA分子を用いた実験を行っている研究者との議論において着想を得た研究課題である.セルオートマトンモデルにおいては,状態遷移については制約が存在しないのが通常である.しかしながら,実際のDNA分子を状態表現として用いるシステムの実装を考えると,セル状態数nに対してn^2のオーダーのDNAが状態遷移に必要となる.状態遷移に関して周期的な変化のような制約を設けることによりDNA数を低く抑えることが期待できる.このような周期的変化を前提としたセルオートマトンモデルについては現在までほとんど考慮されていないため,研究課題として追加している.本非同期セルオートマトンについては,計算万能である回路素子群とそれらを接続する信号線を模擬することができることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロセルモデルのゲルオートマトンへの適応については,マクロセルモデルを非同期セルオートマトンの一つである自己タイミングセルオートマトン(STCA)モデルにより実装を行った.また,計算を行うために,ブラウン運動に基づく計算回路であるブラウン回路の各回路素子,信号線やブラウン運動を行うトークンなどの実装を行っている段階である.回路構成が可能となった段階で,国際会議AFCAなどの国際会議に研究成果を投稿する予定である. 周期状態変化セルに基づくセルオートマトンモデルについては,計算万能性を有するセル状態集合ならびに遷移規則を設計した段階である.Prieseにより提案された回路素子集合の中で計算万能性を有する集合であるE素子およびK素子,これらの素子間を接続する信号線,信号線の上を進行し素子により処理されるトークン状の信号の全ての挙動をセルオートマトン上で再現することによって,計算万能性を有するセルオートマトンモデルを構成した.各セルの状態は周期的な変化,例えば状態1のセルは遷移規則により更新されると状態2,状態3,の準に遷移し,最後の状態から遷移が行われると状態1に戻るという変化のみをするものである.ただし,内部状態により挙動が変わるE素子に関しては,二通りの周期,例えば状態1→状態U→状態1や状態1→状態D→状態1のような周期を持つようなものも許容する.このような制約下において,18状態・57遷移規則の非同期セルオートマトンによりこれらの動作を実現することが可能であることを示した.本研究結果の一部は,国際会議UCNC2016において発表する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については,平成27年度の研究課題を引き継ぐ形で次の二つの課題を設定し,研究を展開する予定である.一つはマクロセルモデルのゲルオートマトンへの適応を行う研究であり,もう一つは各セルの状態が周期的に変化可能な非同期セルオートマトンの最適化である. マクロセルモデルのゲルオートマトンへの適応に関しては,現時点ではトークンの動作などの各要素が構成しつつあるのが現状である.今後はこれらの要素を組み合わせてHubやConservative Joinなどの耐遅延素子群を実装し,計算万能性を有するモデルを構築することが課題となる. 周期状態変化セルに基づくセルオートマトンモデルについては,現時点において耐遅延素子であるK素子,E素子,信号線,信号素子についてセルの状態集合・遷移規則を設計した段階である.現時点で判明している課題としては,(1) DNA同士の反応に基づくセル状態表現・セル状態遷移を行う際には,近傍セルの位置関係を判断することが難しい,(2) 現在のモデルにおけるセル状態ならびにそれらを遷移させるために必要なDNA string数が非常に多く,現在の技術では実装することが極めて困難である,という二点が挙げられる.そのため,今後はこれらの課題を解決するために研究を展開する.また,このセルオートマトンの挙動を解析するためには,計算機上で動作する非同期セルオートマトンシミュレータが必要不可欠であり,これを開発することも課題に挙げられる.
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