公募研究
中性子星合体は、ウランなどの重元素合成過程(R過程)の有力な候補と見なされている。中性子星合体でR過程が達成できるかはその外殻構造にもよる。中性子星の外殻は、中性子過剰核に支配されていると考えられているが、その構造は明らかではない。本研究の目的は、質量が測定されていない中性子過剰核74Niから78NiまでのNi同位体の質量を測定し、中性子星の外殻構造を明らかにすることである。質量測定は、最近、理研RIビームファクトリーに完成した稀少RIリングでの飛行時間測定で行う。本研究の予算では、質量測定の要となる飛行時間測定用検出器の開発を行っている。平成28年度は、以下の開発を行った。1)検出効率向上のために薄膜の前方及び後方に放出する電子に対し、それぞれ最適な電場となるように電極形状を改良した。2)稀少RIリング実験でのビームサイズに対応できるようにφ42mmのMCPを備えた大型機を作成した。1)については、重イオンビームに対して前方検出、後方検出ともに最大99%の検出効率と~40psの時間分解能を得ることができた。2)では、重イオンビームに対して最大99%の検出効率と~60psの時間分解能を得ることができたが、最大で約180 psの時間差の位置依存性が観測された。これは電場と磁場の不均一に起因すると考えている。今後は、電場と磁場の均一性を向上し、位置依存性を100ps以下にする。薄膜もこれまでのマイラー膜(厚さ2ミクロン)から、さらに薄い炭素薄膜(~100 nm)に交換する。これらが達成できれば、2017年秋にも予定されている稀少RIリングでの74Niの質量測定実験に使用する予定である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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