公募研究
本研究は、安定核からきわめて中性子過剰な不安定核まで、さまざまな原子核の核物質半径と陽子半径を独立かつ同時に精密測定し、中性子スキン厚(中性子分布と陽子分布の差)を高精度で定量化することを目的とする。それにより中性子星の解明に必要な核物質状態方程式のなかの不確定性が依然大きい、密度依存対称エネルギー1次微係数Lに強い制限を与える。核物質半径は従来から用いてきた手法を用いる。すなわち、反応断面積を測定し、グラウバー解析を行って決定する。陽子半径は、最近我々が開発した方法で、荷電変化断面積を測定し、改良したグラウバー解析を適用して決定する。反応断面積と荷電変化断面積は同時測定が可能なため、中性子スキン厚をひとつの反応実験だけで決定することができる。平成27年度は、放医研において電荷の識別に重要なイオンチェンバーの開発を進めた。イオンチャンバーの圧力を上げることで分解能を向上させることに成功した。また読み出しチャンネル数を増やし統計処理をほどこすことによっても分解能を向上できることが分かった。さらにイオンチャンバー内で発生するデルタ線の挙動をシミュレーションと実測により明らかにした。平成28年度は、理研RIビームファクトリーの破砕片分離装置BigRIPSにて実験を行なった。核子あたり345MeVのエネルギーの238Uビームから、飛行核分裂によってNi同位体、58Ni~78Niまでを生成し、それらの反応断面積と荷電変化断面積を同時に測定した。測定原理はトランスミッション法による。すなわち、反応標的をBigRIPSの中間焦点位置F5に炭素を設置し、その上流と下流で、Brho-ΔE-TOF法により事象ごとに粒子識別する。得られた粒子数の変化から断面積を得ることができる。データは目下解析中であるが、広い質量数範囲で、中性子スキン厚を出すことができるだろう。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Nucl. Phys. A
巻: 961 ページ: 142-153
10.1016/j.nuclphysa.2017.02.012
Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A
巻: 823 ページ: 41-46
10.1016/j.nima.2016.03.106