研究領域 | 実験と観測で解き明かす中性子星の核物質 |
研究課題/領域番号 |
15H00833
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 敏光 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (80011500)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | K中間子陽子物質 / 中性子星 / K中間子陽子相互作用 / 高密度核 / ストレンジ物質 |
研究実績の概要 |
中性子星に次ぐ高密度天体として、我々は全く新しい物質「K中間子陽子物質」(KPM)を予言した。これは、負K中間子と陽子だけからなる全く新しい原子核で、2016年に発表されたわれわれの論文arXiv:1610.01249v3(投稿中) において初めて公表された。それは、極めて高い密度をもつ中性のバリオン凝縮体で、対応する中性子星よりもバリオンあたりの質量が低いため他の物質に崩壊することができず、また自らが励起されることもない、いわば「暗黒の物質」である。本研究では、まず、この予言の基礎となるKbar-N相互作用とその束縛状態であるラムダ(1405)共鳴粒子の質量をいろいろな方法で決定した。特に、最近発表されたCLAS実験(光核反応)の綿密なデータの解析から、その質量が伝統的に確立している1405MeVであり、従ってKbar-N相互作用は極めて強い引力を持つことが再確認された。K-pp核がDISTO実験およびJ-PARC-E27実験から高密度束縛状態であることがさらに明らかにされ、この情報を元に多重Lambda*=K-p束縛状態が存在し、その多重度が8を越えると中性子物質より安定化する可能性が示された。さらに、KPMが初期宇宙のビッグバンに於いて形成される過程、及び中性子星が崩壊してKPMとなる過程を研究しつつある。KPMは、バリオン一個あたり反クオークを1個含むクオーク・反クオークのハイブリッド物質であり、宇宙初期に反バリオンが消滅する際にそれを逃れた反クオークがつくるレリックであると見做される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
われわれの研究の進捗状況は投稿中の論文に凝縮した形で叙述されている: Y. Akaishi and T. Yamazaki, Akaishi-Yamazaki_1610.01249v2。その内容はL*=K-pの構造・質量・結合モードに関する最近の成果、カイラル対称性の恢復に伴う結合力の増大、ハイトラー・ロンドン的分子結合による多体結合の増加、KPMの生成プロセス、クオーク・グルオン・束縛状態の考察、宇宙初期におけるKPMの生成、などが論じられている。広大な研究テーマが広がっている。
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今後の研究の推進方策 |
中性子星の研究に触発されて、一体、宇宙には陽子だけから成る物質があるだろうか、との問題提起からこの研究が始まった。一方、別の関心からK中間子陽子相互作用の研究が展開し、その成果がK中間子陽子物質の予言を生み出した。これを仮説的段階から先に進めるためには、K中間子と陽子を含む小数多体系の実験的・理論的研究が不可避である。7 GeV以上のエネルギーを持つ、陽子と陽子との衝突実験が検討されている。さらに、超高エネルギーの重イオン衝突において準安定・安定レリックが創られるかも知れない。そのような探索への理論的検討が望まれる。
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