本研究の目的は中性子物質の非圧縮率の精度を格段に向上させることである。そのために世界に先駆けて錫132不安定核における巨大単極共鳴のエネルギー決定を行うことを目標としている。 実験を理化学研究所加速器施設RIBFにおいて行った。最適化した読み出しパッドおよび改良を行ったシリコン検出器を含むアクティブ標的システムと、大強度ビーム利用を可能にする粒子識別検出器群を利用して10日間のデータ収集を行った。実験遂行にあたってはそれぞれの検出器に精通した共同研究者約40名の協力を得た。この実験において、アクティブ標的を用いて原子核反応の反応点近傍を精度よく測定することにより錫領域の不安定核における単極遷移強度の測定を世界で初めて実現させた。 データ解析では精度のよいデータを得るためのアルゴリズム開発を進め、励起エネルギーで1MeV以下の分解能が得られることがわかった。典型的な巨大単極共鳴の幅である4MeVと比べて良い分解能が達成できている。一方で演算時間がデータ解析サーバの購入ではまかないきれないということが明らかになったため、28年度に完成した東京大学のスーパーコンピューティングシステムReedbushを利用することとした。これにより20TBを超えるデータ解析も可能になった。 バックグラウンド事象となるものは重陽子の分解による陽子であるが、その事象がエネルギー損失プロファイルの比較から分離可能であることがわかり、巨大単極共鳴に対応するエネルギー領域に有意なイベント数が認められている。これらの結果を国際会議および国内学会に置いて発表した。
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