研究領域 | 実験と観測で解き明かす中性子星の核物質 |
研究課題/領域番号 |
15H00836
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木内 建太 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (40514196)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重力波 / 数値相対論 / 天体物理学 |
研究実績の概要 |
今年度2月11日にアメリカのAdvanced LIGOから人類初の重力波直接観測に成功したという報告があった。アインシュタイン最後の宿題と題された重力波の直接検出とブラックホールの2重連星の存在証明がもたらした科学的意義は計り知れない。宇宙を見る新しい目として重力波天文学が開闢したが、連星ブラックホール以外にも中性子星からなる連星合体も地上型重力波干渉計の有望なターゲットである。Advanced LIGOに加え、イタリアーフランスのAdvanced VIRGO、日本のKAGRAも本格観測を控えていることから、近い将来連星中性子星合体からの重力波が観測される可能性は高い。 連星ブラックホールの合体と異なり、連星中性子星合体からの重力波は核密度状態方程式、ショートガンマ線バーストの中心動力源、速い中性子捕獲反応による重元素合成に関する重要な知見が得られると期待されている。連星中性子星合体は激しい動的現象であるため、解析的な手法を用いた理論研究は不可能である。数値相対論と呼ばれる数値シミュレーションが唯一の方法であり、本研究ではこれを採用する。特に中性子星磁場に着目し、連星合体おける磁気流体効果をスーパーコンピューターで調べた。本課題に関する論文を主著者として1遍科学雑誌に掲載した。また、関連する研究課題について主著者として1遍、共著者として1遍発表済みである。さらに国際会議における招待講演を2件、一般講演を4件行い、また国内学会における講演を2件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は連星中性子星合体時におけるケルビン-ヘルムホルツ不安定性に着目した研究を行った。合体時の星の接触面は必ずケルビン-ヘルムホルツ不安定と呼ばれる流体不安定性に対して不安定になる。その結果生み出される乱流渦が中性子星が持つ磁場を効率よく増幅することがこれまでにない高解像度シミュレーションで分かった。具体的には先行研究で設定された解像度より約10倍高い解像度を用いたシミュレーションをスーパーコンピューター京で実行した。これにより観測から示唆される10の13乗ガウス程度の中性子星磁場が合体後4ミリ秒程度の非常に短い時間の間に10の15乗から16乗ガウス程度まで効率的に増幅されることが判明した。この結果をまとめた論文は昨年12月に出版されたが、既に引用数は9を超えている。以上から概ね順調に進展していると結論付ける。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き連星中性子星合体による強磁場中性子星形成に関する研究を続ける。具体的には、核密度状態方程式と連星質量を変え系統的な研究を推進する。 連星中性子星合体において強磁場中性子星が不可避的に形成するというパラダイムを確立する。また、磁場の飽和強度は合体時の力学的エネルギーとのequipartitionで決まると予想されるが、この点についても精査する。可能であれば蓄えられた磁場が磁気散逸により熱化されるプロセスを再現する為の中性子星物質の磁気散逸についてモデル化を行う。
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